第749章 青菜を洗うのを手伝って

一橋貴明が不機嫌になっていた時、4階の住人が突然ドアを開け、部屋の明かりが廊下を照らし出し、ようやく明るくなった。

「あら、月瑠ちゃん、こんなに遅くまで仕事だったの？」

ドアを開けたのは寝間着姿のおばさんで、ゴミ袋を手に持っていた。ゴミを捨てに行くところだったようだ。

おばさんは一歩踏み出したところで突然立ち止まり、じっと一橋貴明の顔を見つめた。

一橋貴明は人に観察されることが最も嫌いで、厳しい表情に肉眼で見えるほどの冷気が集まっていた。

「月瑠ちゃん、これはあなたの子供のお父さんでしょ？とてもハンサムね、最近見てるドラマの主役よりもかっこいいわ！」おばさんは声を低くして鈴木月瑠の耳元に近づいた。「一人で子育てするのは大変だもの。子供のお父さんがこんな遅くまであなたを送ってくるなんて、まだ気持ちがあるってことよ。今夜はね、彼を落としなさい。男なんて、みんな同じようなものだから...」

鈴木月瑠は目を丸くした。「山野おばさん、変なこと言わないでください。彼は、彼は...」

「いいのよ、わかってるわ。説明しなくていいの」おばさんは言いながら、一橋貴明の方を見て、にこやかに言った。「あなたは諭知くんのお父さんでしょ？親子そっくりね、二人ともハンサム。私たちの月瑠ちゃんとは才色兼備で天が結んだ仲みたい。今夜はね、帰らないで、ここに泊まりなさいよ。さあ、春の夜は短いけど千金の価値があるわ。二人とも早く上がりなさい。私はゴミを捨てに行くわ」

おばさんはゴミ袋を持って楽しそうに階段を下りていった。

二人は暗闇の中で顔を見合わせた。

元々表情が冷たかった一橋貴明だが、突然薄い唇を曲げた。

彼の以前のもやもやとイライラが一気に消え去り、気分が明るくなった。

鈴木月瑠の顔は赤くなっていた。

もともと彼女と一橋貴明の関係はややこしかったが、山野おばさんにこんなふうに混ぜられて、さらに気まずくなった。

「あなたの息子の父親はここに来たことがないのか？」

一橋貴明はゆっくりと尋ねた。

鈴木月瑠は暗闇の中で黙って目を回した。「彼がここに何しに来るの？」

彼女はその男を知りもしないのに。

この言葉は、間違いなく一橋貴明を喜ばせた。

彼の唇の弧はさらに深くなり、足取りもかなり軽くなった。

ようやく最上階に着くと、鈴木月瑠は鍵を取り出してドアを開けた。