銀針を全て取り出すと、一橋貴明は服を手に取って羽織り、シャツのボタンを留めながら冷たく言った。「大豆田北!」
大豆田北はずっとドアの前で待機していて、急いで近づいてきた。「一橋社長、すでに指示を出しました。一橋ビルの四つの出入り口はすべて出入り禁止にしました。」
「監視室へ行け。」
一橋貴明は長い足を踏み出し、監視室へ向かった。
彼の全身から威厳が漂い、体中から冷気を発していた。
三島一珠には、このような一橋貴明と、先ほどベッドに横たわり全身血まみれだった人物を結びつけることができなかった。
彼女の茶色の瞳が揺れ、奥歯を強く噛みしめた。
彼女は一橋貴明がどんな病気を患っているのか、必ず調べなければならなかった……
一橋ビルは突然警戒態勢に入った。
鈴木月瑠がロビーを出たところで、警報音が鳴り、数人の警備員が出入り口を固めているのを目にした。
彼女の心に不吉な予感が浮かび、急いで一人の警備員を捕まえて尋ねた。「何があったんですか?」
警備員は厳しい表情で言った。「子供が行方不明になったそうです。ビル全体を封鎖して、関係ない人はすぐに退去してください!」
鈴木月瑠の心が沈んだ。「どんな子供ですか?何歳くらい?」
「そんなこと私たちが知るわけないでしょう。早く立ち去ってください、我々の仕事の邪魔をしないでください。」
鈴木月瑠はロビーを見上げた。こちら側はすでに封鎖されており、ロビー内には多くの人が集まっていた。ほとんどの人は状況を把握しておらず、小グループに分かれて議論していた。
彼女はすでにビルから出てきており、中に戻ることはできなかった。
しかし、彼女はとても心配だった!
子供が行方不明になったというが、瑞男という名前の子供ではないだろうか?
あの子はおそらく深刻な心理的疾患を抱えていて、話すことはできるのに話そうとしない。そんな子供を見ると胸が痛んだ。
あの子が無事な姿を見るまでは、安心して立ち去ることなどできなかった。
鈴木月瑠は呆然としながら一橋ビルの正面玄関を回り込み、ビルの横にある木陰の小道に座った。
こちら側は木々が生い茂り、彼女の姿を隠してくれていたが、彼女からは入り口の状況がちょうど見えた。
「ニャー!」
小さな猫がどこからともなく現れ、鈴木月瑠の靴に擦り寄って横になった。