第782章 勝った方が残る

「ママ、あなたのことが大好き……」鈴木月瑠は彼をぎゅっと抱きしめた。「あなたはこんなに素晴らしいのに、どうして手放せるわけがないでしょう?」

「諭知もママのことが大好き、ママが追い出さない限り、一生ママから離れたくない!」

一橋諭知は鈴木月瑠の首に腕を回し、甘ったるく言った。

二人はお互いを抱きしめ、まるで世界に二人だけが残ったかのようだった……

「コンコン!」

そのとき、リビングのドアが突然ノックされた。

鈴木月瑠は一橋諭知をソファに置き、立ち上がってドアを開けに行った。

ドアを開けると、真っ赤な大きな花束のバラが見えた。

「やあ、月瑠、僕に会えて嬉しい?」

希崎は得意げに目を細め、手に持った花を差し出した。

「バラ九十九本、永遠の愛を意味するんだよ。月瑠、早く受け取って!」

鈴木月瑠は完全に固まってしまい、どもりながら言った。「あ、あなたがどうして私の家に?一人で来たの?」

「マネージャーも、アシスタントも、ボディガードも全員下で待ってるよ」希崎は好奇心いっぱいに家の中を覗き込んだ。「月瑠、僕は撮影現場から来たばかりで、まだ何も食べてないんだ。早く入れてよ、君の手料理が食べたいな!」

彼は鈴木月瑠を押しのけ、堂々と中に入った。

そして突然立ち止まった。

二人の小さな子供の視線が空中で交差し、二人同時に固まった。

「なんでここにいるの?」

「なんでここにいるの?」

二人は同時に魂の奥底からの問いかけを発した。

鈴木月瑠は驚いた顔で「あなたたち、知り合い?」と尋ねた。

「僕は彼なんて知らないよ!」

「僕は彼なんて知らないよ!」

二人の子供は同時に顔をそむけ、お互いを気に入らない様子だった。

しかし、言った言葉は不思議なほど一致していた。

鈴木月瑠は疑わしげに左右を見回した。「本当に知らないの?」

この様子は、お互いを知らないようには見えなかった……

一橋諭知と希崎は再び同時に冷たく鼻を鳴らした。

「わかったわ、知らないなら知らないでいいわ。二人ともリビングでおとなしく遊んでいて、私は料理を作るから」

鈴木月瑠は二人の子供の頭を撫でて、あきらめたように台所へ夕食の準備をしに行った。

彼女が行くと、五分ほど似ている二人の子供はすぐに両手を腰に当て、幼い怒りの表情で互いににらみ合った。