「わ……私じゃない……」高倉彩芽は全身を震わせ、しばらく一言も発することができなかった。
田中晴香はその時になってやっと反応し、彩芽を支えながら大声で叫んだ。「彩芽が投稿したってどうだっていいじゃない!私たちは事実を掲示板に書いただけよ!高倉海鈴が愛人になって、自分から進んで不倫相手になったのは事実でしょ!」
高倉彩芽はこの数年間、大学での人脈作りを怠っていなかった。東京大学の女神として、彼女を慕う男子学生は数え切れないほどいた。彩芽が涙を流して苦しむ姿を見た男子学生の心は揺らぎ始めた。「そうだよな、彩芽さんのやったことは少し筋が通らないかもしれないけど、拍手するには両手が必要だろう。高倉海鈴が他人の愛人にならなければ、あんな写真を撮られることもなかったし、今回の騒動も起きなかったはずだ。結局のところ、高倉海鈴の品行が悪いのが原因だ!」
高倉海鈴の後ろにいた学生たちは怒り心頭だった。
これは詭弁だ!
生活指導主任は両陣営が剣を交えんばかりの様子に焦りを隠せなかった。事態がこんな風に発展するとは思いもよらなかった。どうすればいいのか!
「みなさん、落ち着いてください。これは何か誤解があるはずです。まずは教室に戻って、学校側の調査が終わるまで待ってください。必ず納得のいく説明をさせていただきます。」
彼は学生たちを説得しようとしたが、怒りに燃える学生たちは誰も彼の話を聞く耳を持たなかった。
高倉彩芽側の学生が冷笑した。「説明?きっと学校は大事を小事に、小事を無かったことにするんでしょう?」高倉海鈴の山内正という立場がある以上、学校は簡単には彼女を見捨てないだろう。そのことを理解していたからこそ、彼らはここで抗議し、学長に説明を求めようとしていたのだ。
「君たちの目には、学校はそんなに是非をわきまえない存在に映っているのかな?」
谷口敦はゆっくりと歩み寄りながら言った。「事実はまだ確認されていない。学校側も高倉海鈴が愛人だという証拠は見つけていない。たった一枚の写真で彼女を不倫相手と決めつけるのが、大学生としての判断力なのかな?」