第64章 主寝室から出て行け

「それで、お父様は夫主令をお母様に渡さなかったの?」高倉海鈴は少し好奇心を持って尋ねた。

「ああ」藤原徹は軽く笑い、意味深な眼差しで「なぜ突然夫主令のことを聞くんだ?欲しいのか?」

高倉海鈴は言葉に詰まり、すぐに目を逸らした。聞いただけで欲しいと思われるの?この男の思考回路がどうなっているのか分からない。もし藤原夫人に自分が夫主令に興味があると知られたら、また厚かましいと指差して罵られるに違いない。

藤原徹は口元を緩めた。この女は賢そうに見えて、時々愚かなところがある。夫主令が既に彼女のものになっていることにも気付いていない。

二人が階段を上がった後、藤原徹は直接書斎へ向かった。会社から送られてきた書類にまだ目を通しておらず、ビデオ会議の主催も控えていた。高倉海鈴は三階の主寝室に戻って自分の物を整理し、お腹が空いて鳴り出すまでそうしていた。やっと食べ物を探しに下りていった。