「わあ、高級車!」
「誰の車なの?すごく素敵!」
「物知らずね。あれは村上家の車よ。村上お嬢さまがいらっしゃったみたいね」
「村上お嬢さま?誰?うちの学校の学生?聞いたことないけど」
高倉海鈴は'村上お嬢さま'という言葉を聞いて、口元に笑みを浮かべた。あの女、追いかけるのに学校まで来たのね……
そのとき、情報通の学生が周りの人にゴシップを伝えた。「村上お嬢さまを知らないの?じゃあ、藤原ぼっちゃんのことも知らないの?噂によると、村上お嬢さまは藤原家と縁組みして、藤原ぼっちゃんと結婚するらしいわ」
村上お嬢さまのことを知らない人はいても、藤原ぼっちゃんの名前は、ほとんどの人が聞いたことがあった。特に、家が裕福で権力のある人たちは、藤原徹の名を知っており、多くの人が家族から藤原徹に会ったら気をつけるように、絶対に関わらないようにと警告されていた。
今、藤原徹のゴシップを聞いて、もう聞けないと思う人もいれば、好奇心から集まってくる人もいた。先ほど話していた学生が神秘的に続けた。「私の耳に入った情報によると、村上お嬢さまと藤原ぼっちゃんはずっと前から婚約していて、しかもこの婚約は藤原ぼっちゃんが自ら決めたものなの。村上お嬢さまと結婚したいって指名したのよ。お金持ちの結婚に愛なんてないって知ってるでしょ?でも村上お嬢さまと藤原ぼっちゃんは違うの。彼らは本当の愛なのよ」
学生たちは頷いた。「そうね、藤原ぼっちゃんはあの地位なら、もう縁談で地位を固める必要なんてないもの。自ら村上お嬢さまと結婚を望むなんて、本当の愛以外に何があるっていうの」
高野広は彼らのゴシップを聞きながら、心の中で反論していた。実は藤原社長の心の中では、婚約者は'六女'のはずだ。六女が誰なのかは知らないが、彼の知る限り、藤原社長があの日区役所に行ったのは、六女のためだった。
残念ながら、六女はその日区役所に来なかった。六女が藤原社長との結婚を望まなかったからだという……そして藤原社長は現在の奥様、高倉海鈴と結婚することになった。
藤原徹は群衆の中の村上真由美を一瞥して、淡々と尋ねた。「海鈴は?」