「叔父さんで彼女を脅すつもり?」
長年、叔父は高倉家で唯一彼女に優しい人だった。海鈴は何度か叔父にこの汚れた高倉家から早く離れるように言ったが、叔父は応じなかった。彼女には理解できなかったが、叔父が高倉家に特別な思い入れがあることは分かっていた。
もし国生に追い出されたら……
海鈴の声が冷たくなった。「分かったわ。30分以内に必ず行くわ」
30分後、海鈴が高倉国生のオフィスの前に到着すると、中から国生のへつらう声が聞こえてきた。
「村上社長、誤解です、全て誤解なんです。すぐに海鈴を呼んで謝罪させます。お茶とコーヒー、どちらがよろしいでしょうか?秘書にすぐ用意させます」
村上勝則は冷笑し、手を振って高倉国生の言葉を遮った。「高倉社長のお茶は遠慮させていただきます。良い娘さんを育てましたね。我が村上家に対して策を弄するとは。親子そろって同じですな。今回の提携の話は無しです」