その人物は多くの貴重な元素を手にしており、多くの国から羨望の的となっているにもかかわらず、無事でいられるということは、その実力と富が既にいくつかの国と比肩できるレベルに達していることを意味している。
「藤原奥様は何をそんなに夢中で見ているのですか?」藤原徹は淡々と尋ねた。
高倉海鈴は驚いて、慌ててスマートフォンをしまい込んだ。「藤原さん、青山怜菜を監禁したって本当?」
男の眼差しは冷淡で、冷笑を浮かべた。高倉海鈴のその様子は、どう見ても後ろめたいことをしているようだった。
高倉海鈴は緊張して藤原徹を見つめ、心中は不安でいっぱいだった。
実は彼女はその大物に全く興味がなく、相手が誰なのかも知りたくなかった。ただ、このことは藤原徹に知られてはいけなかった。
藤原徹は頷き、無関心そうに言った。「彼女はお前を暗室に閉じ込めた。同じ目に遭わせてやったまでだ。」
高倉海鈴の心に特別な感情が湧き上がり、口を開いて小さな声で「ありがとう」と言った。
顔を上げた時、ちょうど藤原徹の深い瞳と目が合った。
高倉海鈴は一瞬戸惑い、「なぜそんな目で見るの?」
お礼を言うのはおかしいのかしら?
藤原徹の眼差しが冷たくなった。「私の不注意で隙を与えてしまった。これからは私たちの間で礼は不要だ。」
礼が不要なのは夫婦だからで、そんな言い方は堅苦しすぎる。それとも、この一件の原因が彼にあるからなのか。
高倉海鈴は突然もやもやした気持ちになり、言葉では表現できない感覚に襲われた。
藤原徹は彼女を守りすぎているようだった。
「あっ!」
その時、外から悲鳴が聞こえた。
高倉海鈴は青山怜菜の声だと分かり、すぐに口元に笑みを浮かべ、藤原徹の手を引いて外に飛び出した。
「白蓮花が叩かれてる?見に行きたい!」
藤原家の執事は高倉海鈴が藤原徹の手を引いているのを見て、心臓が止まりそうになった。若様は他人との親密な接触を一切許さないのに、今回はきっと怒るに違いない。
暗室の中。
高野広は棘のついた板を手に持ち、冷静な表情で言った。「青山さん、失礼します。」
そう言って、板を振り上げた。