第157章 伝説の婚約者と出会う

高倉海鈴は急いで携帯を取り出した:【三兄、貴重な元素を持っている大物の名前は何?】

秋山明弘が返信:【よく分からない。老人も知らないんだ。この人は非常に控えめで、本名を明かすことはないけど、科学研究所の人たちは皆「陸田神」と呼んでいる。】

陸??

高倉海鈴はその文字を見た瞬間、凍りついた。顔は真っ青で、声は震えていた:「陸田さんが藤原家に何しに?」

大物が貴重な元素を持っていて、1グラムで二千萬ドルもする。もしこの人が……

言葉が終わらないうちに、陸田さんは笑いながら答えた:「藤原さまと貴重な元素の取引の話をしに来ました。」

高倉海鈴:「??」

姓も身分も一致して、しかも藤原家にいる。高倉海鈴は心に冷たいものが走り、思わず数歩後ずさりした。「では陸田さんのお邪魔はいたしません。私は失礼します。」

「高倉さん、このまま帰られるんですか?」

陸田さんは満面の笑みで、相変わらず穏やかな声で言った。「私が何か失礼なことでもしましたか?」

高倉海鈴の心は石を詰められたようで、言いようのない気持ちだった。

目の前の男性は穏やかで礼儀正しく見えるが、どこか陰険な印象を与えた。

彼の目は毒蛇のように冷たく、高倉海鈴は背筋が凍る思いをし、ぎこちなく笑った。

「陸田さんは考えすぎです。私は急用があって、それに初めてお会いしたのに、なぜそんなことを?」

陸田さんは口角を上げ、「初対面なら、なぜ高倉さんは私を避けるのでしょう?あなたはもう結婚していることを、よくご存じのはずです。」

やばい!

高倉海鈴は心臓が飛び出しそうになり、唾を飲み込んだ。

当時の婚約は口約束に過ぎず、その大物は気にも留めていないはずだから、高倉海鈴も真剣に考えていなかった。ただの老人の戯言だと思っていた。

しかも高倉海鈴が十八歳の時、老人は急いでその大物に婚約の件を確認しに行ったが、その大物は断ったのだ。

もう過去の話なのに、ここまで来て何を演じているの?

断ったのは彼なのに、結婚したことを責めるのも彼。この人、おかしいんじゃない?

高倉海鈴は怒りを隠せない表情で、「陸田さん、あなたの言っていることが分かりません。私は失礼します!」