第190章 鍼灸治療

高倉海鈴は耳が赤くなり、気まずそうな表情を浮かべながら、笑顔で自分の心の内を隠した。「社長、誤解しないでください。私はあなたの病気を治すために来たんです」

藤原徹は軽く笑い、目を伏せた。「藤原奥様、もう結構です」

高倉海鈴は一瞬顔を曇らせた。「藤原さん、夜になると失明するのは、毒に当たっているからなんです！」

藤原徹は平然とした表情で、少しも驚いた様子はなかった。「知っています」

高倉海鈴は驚いて「知っていたの？じゃあ、あなたは……」

藤原徹は冷たい目つきで「この毒には解毒剤がない。鍼灸なんてもっと無意味だ」

彼は鍼灸セットを見つめ、表情を暗くした。「だから、もう結構です」

毒に当たったと知った時、彼はすでにこれからの日々を予見していた。だから、もがく必要はなかった。

高倉海鈴は胸が震えた。彼女は藤原徹を見て少し見知らぬ人のように感じた。彼の目には悲しみと冷淡さが満ちていて、まるで失明するかどうかは彼には関係ないかのようだった。

彼女は少し黙り込んでから、仕方なく溜息をついた。

男は振り向いて、彼女に視線を向けた。

高倉海鈴は口を尖らせ「藤原さん、私は今あなたと結婚したんです。もしあなたが失明したら、私がとても可哀想じゃないですか！」

藤原徹は眉を上げた。

高倉海鈴は不満げな表情で「私のような弱い女性を、あなたがもう守れなくなるじゃないですか。あなたにはたくさんの敵がいるのに、その時は私が真っ先に狙われちゃいますよ！」

「……」

藤原徹は目を伏せ、顔をそむけながら、諦めたような声で「……脱ぐから、治療してください」

高倉海鈴が弱々しく演じたのは、彼を治療するためだった。たとえ効果がないかもしれないが、彼は高倉海鈴を悲しませたくなかった。

鍼灸くらいなら、彼女が喜ぶならそれでいい。

高倉海鈴は藤原徹のパジャマを脱がせると、瞳孔が縮んだ。彼の背中には傷跡が無数にあり、新しいものも古いものも入り混じって縦横に走っていた。

鞭の跡もあれば、鍼灸の痕もあり、高倉海鈴の心を痛めた。

彼はすでに治療を受けていたはずだが、全く効果がなかったから諦めたのだろう。

彼女の心臓が締め付けられ、全身に痛みが走るのを感じた。

藤原さん……