久保朱里は慌てて制止した。「もういいわ。海鈴が私のことをどう思おうと構いません。もう彼女を責める必要はありませんよ」
「久保さんだけがこんな仕打ちを我慢できるなんて、本当に優しすぎます!」
「高倉の長女のわがままのせいで、高倉海鈴を傷つけたくないばかりに、こんなに長い間結婚式も挙げられなかったなんて!」
久保朱里は周りの非難の声を聞きながら、内心で喜びに浸っていた。確かに海鈴と田中社長がベッドを共にする場面は直接見ていないものの、彼女にわがままで薄情な悪女というレッテルを貼ることには成功した。
この芝居は、無駄ではなかった。
彼女は苦笑いを浮かべながら言った。「みなさん、もう解散しましょう。パーティーに参加してください。私たち高倉家の私事で秋山社長の大事な用事を邪魔するわけにはいきません」