第270章 陸田家の方は価値観がおかしいのでは?

高倉海鈴は唇の端を引き上げ、「石山の奥様、あなたは当時、陸田の長女の婚約者を奪ったと聞きましたが、そんなに得意げな様子を見ると、きっと幸せな生活を送っているんでしょうね」

藤原徹は眉を上げた。

陸田渚は困惑した表情を浮かべたが、さすがに経験豊富な彼女はすぐに冷静さを取り戻し、平然と言った。「高倉さん、どこでそんな噂を聞いたのですか。私と石山さんは昔から愛し合っていたのです」

「略奪愛の当事者が自分から認めるわけないでしょう?」

高倉海鈴は嘲笑うように言った。「あなたたちが見下している藤原夫人も、自分が略奪者だと認めなかったけど、彼女が藤原家に来た時、陸田の長女はまだ生きていたじゃない。略奪者じゃないなら何なの?」

そこで一旦言葉を切り、「そうそう、石山の奥様、あなたと藤原夫人は両方とも陸田の長女を利用して這い上がった人ですよね。同じような人なのに、人を非難する時は、少し自分のことも考えた方がいいんじゃないですか?」

「どちらも第三者なのに、あなたが他人より特別だとでも?」

個室の中は恐ろしいほど静かになり、空気さえも凍りつきそうだった。

陸田渚は全身を震わせ、何年も前の出来事を暴かれ、穴があったら入りたい気持ちだった。

「黙りなさい!そんなことは全然ありません。たとえあったとしても、当時陸田の長女は石山家に嫁いでいなかったんです。私の叔母が石山家に嫁ぐのは、いけないことなんですか?」

「藤原徹は私生児です!彼の母は略奪者です!他人の家庭を壊した人を、叔母と比べることなんてできません!」

陸田家の若い者が怒りを込めて叫んだ。

高倉海鈴は嘲笑って言った。「あなたの言い方だと、結婚している人を奪うのが略奪で、結婚していなければ略奪じゃないってこと?陸田家の方は価値観がおかしいんじゃないですか?陸田の長女は本当に不幸でしたね、陸田家のような変な人たちに出会って!」

「お前!」陸田家の若者は言葉に詰まった。

彼は先ほど思わず口走っただけで、深く考えていなかった。これが広まったら、もう顔向けできなくなる。

確かに当時、陸田の長女は石山若旦那と婚約していたが、それは家族の都合による縁談で、愛情はなかった。