第283章 正しい者は影を恐れず

松下達也は信じられない様子で振り向いた。「徹、何をしているんだ?」

藤原徹は酒を一口飲み、ゆっくりと目を上げた。「一体誰が私の妻を通報したのか、松下若旦那は説明すべきではないかな?」

二人は顔が真っ青になった。松下達也は落ち着いているふりをして言った。「説明することなんてないよ。僕が通報したと思っているの?そんなことできるわけないじゃないか。」

藤原徹は冷静な表情で、高野司がノートパソコンを取り出し、冷たく淡々とした声で言った。「松下若旦那、副学長室の監視カメラの映像がここにあります。これであなたが奥様を通報したことは証明できます。何か言い訳はありますか。」

高野司が言い終わると、松下達也は目を見開いて、テーブルの上のパソコンを睨みつけ、歯を食いしばって叫んだ。「いいぞ!よくやった!」

「説明する気はないのか?」

藤原徹は軽く言った。「そうか。」

たった一言だったが、それは松下達也の死期が近いことを予感させた。

八尾夢子は胸が震え、恐れを抱いて藤原徹を見つめた。彼女は藤原徹が本当に怒っていることを知っていた。

彼女は唇を噛みしめ、震える声で言った。「徹、達也を責めないで。確かに達也は海鈴のことを通報したわ。海鈴に迷惑をかけたのも事実よ。でも通報した時は、裏口入学した人が海鈴だとは知らなかったの。ただ東京大学の名誉のことを考えていただけで、それに徹はここの理事でしょう?こんなことが起きれば徹の評判も傷つくわ。全部徹のためを思ってやったことなのよ!」

高倉海鈴はふんと鼻を鳴らした。「松下若旦那は徹のことをよく考えてくれるのね。」

藤原徹はゆっくりと言った。「きちんと調査もせずに通報するなんて、松下若旦那はこの歳まで生きてきて、まだ頭が足りないのかな?」

松下達也は屈辱感が胸に込み上げてきた。

八尾夢子は気まずそうに説明した。「徹、達也を責めないで。責めるなら私を責めて。」

「実は、私たちが子供の頃からずっと仲が良くて、徹が私と結婚すると思っていたのに、突然海鈴と結婚したから、達也が私のために抗議したのよ…」

高倉海鈴は呆れて笑った。「八尾さん、さっきは達也さんが誰を通報したか知らなかったって言ってたのに、今度は私のために抗議したって。考えも無しに話してるんですか?」