松下達也は軽蔑した表情で言った。「高倉海鈴のような女は表に出せたものじゃない。少しばかりの貯金があるからって全部隠しているなんて。あなたは慈善事業のために東奔西走しているのに、どうして彼女はあなたを見習えないのかね?」
八尾夢子は得意げに笑った。
しばらくして、オークションが正式に始まった。
最初の競売品は書画だったが、有名な画家のものではなかったため、誰も札を上げようとしなかった。
寄付とはいえ、役に立つものを買って帰りたいもので、むやみに金を使うわけにはいかない。
その時、甘い女性の声が響いた。「四百万円」
この絵は誰も見向きもしないものだったので、この四百万円は無駄遣いだった。
「八尾さんはいつも大局を見据えていらっしゃる。この絵を買えるのは彼女しかいないでしょうね」