第321章 異常な出来事には必ず理由がある

山下友希の声には驚きが混じっていた。「じゃあ、寄付者が誰か知ってる?」

高倉海鈴は山下友希のこの質問から、その人物を彼女が知っているはずだと察した。

一体誰なのか?

彼女が推測する前に、山下友希が口を開いた。「藤原涼介よ」

藤原涼介?

高倉海鈴は嘲笑うように笑った。「彼がそんなに気前がいいの?」

「もちろん高倉彩芽のためよ!」山下友希は軽蔑的な口調で言った。

「高倉彩芽の私生児の身分が暴露された後、学校中が大騒ぎになって、退学しろって言う人までいたのよ。藤原涼介が校舎一棟を建設する資金を出したことで、高倉彩芽がどんな身分であろうと、彼女は未来の藤原奥様なんだから、誰も文句は言えなくなったわ」

高倉海鈴は口角を上げた。「そう...」

山下友希は軽く鼻で笑った。「学校は寄付式典を開いて、藤原涼介と高倉彩芽に感謝するつもりよ。それで高倉彩芽が学校幹部に、あなたにも参加してほしいって言ったの。学長からすぐに電話があるはずよ」

高倉海鈴はそのことについてはどうでもよかった。ただ一つ気になるのは、校舎一棟を建てるにはかなりの金額が必要なはず。藤原涼介はいつからそんなにお金持ちになったのだろう?

...

電話を切ってまもなく、学校幹部から電話があり、午後3時からの寄付式典への参加を要請された。

高倉海鈴は承諾したが、すぐには出かけず、パソコンを開いて操作を始めた。画面には複雑な文字や記号が表示された。

彼女は一瞥して、口角を上げた。

「執事!」

執事はすぐに駆けつけた。「奥様」

高倉海鈴は冷笑しながら言った。「藤原明に電話して、すぐに東京大学に来るように言って。こんな大人なのに、口座から巨額の金が盗まれたことにも気付かないなんて!」

異常があれば必ず理由がある。藤原涼介がどこからそんな大金を?なるほど、藤原明の口座から盗んだのか!

...

高野広は高倉海鈴が急いで去っていくのを見て、声をかけた。「社長、奥様と一緒に行かれませんか?」

藤原徹はコーヒーを一口すすり、平然とした表情で答えた。「この程度の問題なら、彼女で十分だ」

高野広は疑問に思った。「高倉家なんて、社長の指一本で潰せるのに、なぜ...」

藤原徹は手を振った。

高倉家は高倉海鈴の幼年期のトラウマだ。彼女はいじめと人間の最も醜い悪意を経験した。