第409章 ジュエリーデザインコンテストに参加

秋山明弘は急いで言った。「よく考えてみて。」

海鈴は記憶力がとても良かったので、見覚えがあると言うからには、きっとどこかで一度会ったことがあるはずだ。

もし沙織の家族が祖父の手がかりを持っているなら、どんなに困難でも、試してみる価値がある。

高倉海鈴は少し考えてから、「たぶんフランスのファッションショーだと思います。私は山内正の身分で出席していて、そこで沙織に会ったはずです。あのショーに参加できたのは、国際的に有名なデザイナーか名門家族だけでしたから。」

「フランスの高級ファッションブランドの家族を調べてみて。沙織の家族はそのうちの一つかもしれない。」

秋山明弘は承諾しながら、突然何かを思い出したように「そうそう、もう一つ。数日後に東京でジュエリー展があるけど、行きたい?」

「準備中です。」高倉海鈴は淡々と答えた。

秋山明弘は冗談めかして言った。「海鈴、遠山初美の名前があれば、優勝は確実だよ!」

電話を切った後、高倉海鈴は考えた。三兄の言う通りだ。

遠山初美という名前は目立ちすぎる。この身分で参加すれば、比較の余地もなく、そのまま優勝になってしまうだろう。

あれこれ考えた末、彼女はペンを取って遠山初美の名前を消し、匿名で参加することにした。

高倉海鈴はただ賑やかしに参加するだけで、順位を狙うつもりはなく、楽しむだけのつもりだった。

遠山初美の名前は軽々しく明かせない。さもないと、名門の奥様たちが渡道ホールに殺到することになり、東京での平穏な生活も台無しになってしまう。

……

一方、松下達也は何処からか入手したジュエリー展の参加者リストを見て、冷ややかに笑った。「夢子、リストに高倉海鈴の名前はないよ。君が参加すると聞いて、怖気づいたんだろう。」

松下達也はデザイン業界についてあまり詳しくなかったが、八尾夢子が海外で多くのブランドを持ち、服飾やジュエリー分野で活躍していることは知っていた。彼女のデザイン作品は業界で高い評価を受け、国際的な名声を得ていた。

八尾夢子は一流のデザイナーではないかもしれないが、若くしてここまでの成果を上げたことは確かだ。高倉海鈴と比べれば。