第470話 ブサイクなのに、いい夢見すぎ

久保朱里は、藤原涼介が婚約を破棄した後、高倉海鈴は適当な男と結婚したと言った。その男は家も車も持っていない貧乏な一般労働者だと聞いている。

高倉彩芽は得意げな表情を浮かべた。高倉海鈴が鈴木響と結婚しないのなら、一労働者の妻として権力も地位もない生活を送ることになる。一方、自分は藤原涼介の妻として藤原家の奥様になれる。高倉海鈴は永遠に自分には及ばない。

確かに藤原涼介は藤原家の傍系に過ぎないが、それでも東京の上流社会の一員だ。高倉海鈴なんて自分と比べものにならない。自分が適当に買う服一着が、彼女の貧乏な夫の年収に匹敵するのだから。

そう考えると、高倉彩芽は得意げな笑みを浮かべたが、表向きは涙を拭いながら悲しそうに装った。「お姉さま、私はただあなたに苦労してほしくないだけなの。鈴木若旦那と結婚すれば、後半生を心配なく暮らせるわ。あの男と苦労する必要はないのよ!」