第470話 ブサイクなのに、いい夢見すぎ

久保朱里は、藤原涼介が婚約を破棄した後、高倉海鈴は適当な男と結婚したと言った。その男は家も車も持っていない貧乏な一般労働者だと聞いている。

高倉彩芽は得意げな表情を浮かべた。高倉海鈴が鈴木響と結婚しないのなら、一労働者の妻として権力も地位もない生活を送ることになる。一方、自分は藤原涼介の妻として藤原家の奥様になれる。高倉海鈴は永遠に自分には及ばない。

確かに藤原涼介は藤原家の傍系に過ぎないが、それでも東京の上流社会の一員だ。高倉海鈴なんて自分と比べものにならない。自分が適当に買う服一着が、彼女の貧乏な夫の年収に匹敵するのだから。

そう考えると、高倉彩芽は得意げな笑みを浮かべたが、表向きは涙を拭いながら悲しそうに装った。「お姉さま、私はただあなたに苦労してほしくないだけなの。鈴木若旦那と結婚すれば、後半生を心配なく暮らせるわ。あの男と苦労する必要はないのよ!」

周りの人々の表情が和らぎ、思わず頷いた。

「彩芽ちゃんは優しいわね。お姉さまのことをこんなに考えて、良い縁談を願っているのね。」

「藤原若旦那は元々高倉海鈴の婚約者だったのに、今は彩芽ちゃんと藤原若旦那が間もなく結婚するのよ。彩芽ちゃんは心に負い目があるから、高倉海鈴のためにも良い縁談を探してあげたいのね。」

「私たちが彩芽ちゃんを誤解していたわ。」

高倉彩芽は穏やかに口を開いた。「お姉さま、もしあなたが嫌だというなら、それでいいわ。私は強制したりしないから。でも、もう鈴木家から結納も届いているのよ。どうしたらいいのかしら。」

「だめ!絶対に結婚するのよ!」高倉の祖母は怒鳴った。「海鈴、私たちは皆あなたの身内よ。どうしてあなたを害するようなことをするの?貧乏人と結婚して何がいいの?鈴木若旦那があなたを気に入ってくれたのは、あなたの幸せじゃないの?」

高倉彩芽も同調した。「お姉さま、私と涼介兄はもうすぐ結婚するの。あなたが一般の労働者と結婚するのを見過ごすことはできないわ。お金が大好きなあなたでしょう?鈴木若旦那は大金持ちよ。嫁げば幸せになれるわ。」

周りの人々の説得を聞きながら、高倉海鈴は相変わらず軽蔑的な表情を浮かべていた。それを見た鈴木家の方々は激怒した。