監督とプロデューサーの顔色が一変した。
青山博之は言い終わるとすぐに立ち去り、監督は慌てて追いかけた。「青山さん、怒らないでください。確かに契約書にはこの役は必ずあなたの同意が必要だと書いてありますが...久保さんだって他人じゃありませんよ!知り合いじゃないですか?それに彼女は久保家のお嬢様で、この役を演じたいと言ってくれて、さらに投資もしてくれるんです。映画の興行収入も上がるはずで、私たちにとってもいいことばかりなんです。」
「それに、もう半分撮影が終わっているのに、今抜けてしまったら映画が台無しになってしまいます。今から新しい俳優を探すのも間に合わないし、この損失も...」
青山博之の弁護士が近づいてきて、冷たく答えた。「いかなる損失も青山さんとは無関係です。伊藤監督、契約書には明確に書かれています。この役は青山さんが決定権を持つと。あなた方が契約違反をした以上、青山さんも約束を守る必要はありません。それに、青山さんは違約金も支払っており、十分な誠意を示しています。」