第488章 久保家のお嬢様は買い物代を払わない

「久保さん、合計で四億三千万円になりますが、ただいま店内でキャンペーンを実施しており、一億円以上のお買い物で割引が適用されます。端数を切り捨てさせていただいて、四億二千万円でよろしいでしょうか。お支払いはカードで...」

...

店内は静まり返った。

久保紫乃は顔を曇らせ、鋭い声で言った。「四億円?」

冗談じゃない!このバッグがそんなに高いの?

店長は相変わらず笑顔を浮かべながら「四億二千万円です。久保さんは千葉の佐藤家のお嬢様ですから、このくらいの金額はお気になさらないでしょう。もし今お手元にお金がないようでしたら、後ほど持ってきていただいても構いません。その間、コーヒーとお菓子をご用意させていただきます」

久保紫乃の表情は暗いものから青ざめたものへと変わった。

彼女は高慢に鼻を鳴らした。「ふん!たかがこんなバッグで四億円?私をカモだと思ってるの?ここは詐欺店よ!まあいいわ、大目に見てあげる!行きましょう!」

そう言って、彼女は立ち去ろうとした。

高倉海鈴は冷静な表情で彼女を遮り、営業スマイルを浮かべながら「久保さん、当店は高級品を専門としており、使用している素材も最高級のものばかりです。それに、これらのバッグには全て価格表示がございます。おそらくよくご覧になっていなかったのでしょう。もし...お支払いが難しいようでしたら、返品も可能です」

久保紫乃は久保家の傍系の令嬢に過ぎず、突然四億円を用意するのは少々困難だった。

彼女は激怒して叫んだ。「あなたたちは詐欺師よ!」

「久保さん、誤解されているようです」高倉海鈴は瞬きをして続けた。「これらのバッグには全て価格表示がございます。高いとお感じになるなら、お買い上げいただかなくても結構です。強制はいたしません。ですが、久保家のお嬢様として、お支払いもせずにバッグを持ち去ろうとするのは、強盗と何が違うのでしょうか?」

「久保さんが私を詐欺師とおっしゃるのは心外です。あなたはボディーガードに店内を封鎖させ、専属接客を要求されました。通常の営業であれば、この時間帯で少なくとも六千万円の売上があったはずです」

「さらに、お客様を追い返したことによる補償と謝罪の費用も必要で、それだけでも二千万円ほどかかります」