藤原徹は優しく口角を上げ、高野司に目配せをした。
高野司はすぐに理解し、外に出て電話をかけた。「秋山さん、はい...社長がもうすぐ秋山の奥様を連れて行きます。」
「分かりました、秋山さん。本当にありがとうございます。奥様がお二人の用意したサプライズを知ったら、きっと喜ばれると思います!」
高倉海鈴の母の名義の店舗は、もともと高倉グループの名義でしたが、今はすべて取り戻し、高倉海鈴は本社を「秋」に改名しました。母の名前だけがこれらの店舗にふさわしいと。
これからは彼女がこれらの店舗のオーナーになるのだから、見に行かないわけにはいきませんよね?
木村香織は早めにお祝いに来て、高倉海鈴に小さな贈り物の箱を渡した。「これはお祝いの品です。私からの些細な気持ちです。」
高倉海鈴は微笑んで受け取り、彼女の手を取ってショッピングモールに入った。
しかし、普段は人でごった返すショッピングモールが、今はとても静かでした。店舗の入り口には接客スタッフがいるものの、客が一人もいませんでした。
高倉海鈴は不思議そうに見回しました。これらの店舗は名前が変更され、新商品やセールの看板も掲げられているのに、なぜ客がいないのでしょうか?
近づいてみると、ある店舗の両側がボディーガードたちに囲まれ、誰も近づけないようになっていました。
藤原徹の表情が冷たくなり、高野司は急いで言った。「社長、状況を確認してきます。」
高倉海鈴はある店舗に向かいました。そこは数十人のボディーガードに守られており、一人一人が物々しい様子で、客たちは仕方なく立ち去るしかありませんでした。
しばらくして、高野司は暗い表情で戻ってきた。「社長、久保家の分家のお嬢様が来られて、そのボディーガードたちが入り口を塞いで客を入れないようにしているんです。」
久保家?
高倉海鈴にはどこかで聞いたような気がしましたが、どんな家族なのか思い出せませんでした。東京には久保という名家はないはずです。
分家のお嬢様がショッピングモールで買い物をするのに場内を封鎖するなんて?本当に傲慢すぎます。
木村香織は冷ややかに笑った。「久保家、大阪の久保家?その家のことは聞いたことがあります。」