このとき高倉海鈴は藤原徹の上に覆いかぶさっていた。しかも頭は藤原の下腹部に埋もれ、さらに下へと滑り落ちそうになっていた。この光景は言葉では表現できないものだった。
男は息を飲み、手を伸ばして彼女を引き上げながら、低く魅惑的な声で言った。「藤原奥様、これは私を支えようとしているんですか?それとも押しつぶそうとしているんですか?」
高倉海鈴は恥ずかしさで顔を赤らめた。「……」
彼女は本当に他意はなく、ただ藤原徹を支えようとしただけだった。まさかこんな恥ずかしい体勢で彼の上に覆いかぶさることになるとは思わなかった。
よく考えてみると、さっき何かに触れたような気がして、顔がどんどん赤くなっていった。そして首を振りながら、真面目な表情で言った。「わざとじゃないんです!」
「ふむ、藤原奥様はいつもその言い訳ですね。次は別の理由を考えたらどうですか?」
高倉海鈴が反論しようとした時、過去の恥ずかしい場面を思い出した。確かに彼女はいつも「わざとじゃない」と言い、「これは誤解です」と言い訳をしていた。
でも今回は本当にわざとではなく、ただ親切心から支えようとしただけだった。
空気が静まり返る中、彼女はまだ藤原徹の上に覆いかぶさったままだった。おかしいと気づいて起き上がろうとした時、突然高野広が飛び跳ねるように走って入ってきた。
「社長!社長、久保家を見張るようにとのご指示でしたが、私は——」
高野広は部屋に入るなり目の前の光景を目にして、その場で固まってしまった。
彼はぼうっと立ち尽くしたまま数秒間見つめ、慌てて目を手で覆いながら動揺した声で言った。「何も見てません!続けてください!私なんていなかったことにしてください!」
藤原徹:「……」
高倉海鈴:「……」続けるって何よ!高野広、そんなに妄想しないでよ!
彼女は即座に藤原徹の上から降り、咳払いをして「高野広」と呼んだ。
「はい?奥様、私もう行きますから、気にしないでください。本当に何も見てませんし、誰にも言いませんから。リビングでそういうのも雰囲気があっていいと思いますけど、せめてドアくらい鍵かけておいた方が…私はもう出ますから、どうぞお二人とも続けてください!」
高倉海鈴は彼の発言に呆れ果てた。そのとき男は服を整えながらソファに座り、冷ややかな声で「高野広」と呼んだ。