第580章 自作自演

久保真美は緊張のあまり言葉が出なかったが、すでに母親にメッセージを送っており、母親は大丈夫だと言って、すべて手配済みだと伝えてきたので、やっと安心できた。

しかし久保真美はまだ警察に通報したくなかった。通報すれば事が大きくなり、たとえ高倉海鈴が盗んだとしても、自分も一緒に恥をかくことになるからだ。

しばらくして、一人の警官が皆の前に歩み寄ってきた。

久保真美は、この人がきっと母が手配した人に違いない、だから自分の味方をしてくれるはずだと考えた。

警官は少し困ったような表情で口を開いた。「西村奥様、お孫さんが、これは……」

藤原徹は冷静な表情を保っていた。

久保真美はこの状況を見て、相手がきっと高倉海鈴の窃盗を証明しようとしているのだと思い、すぐに唇を噛んで、わざと委屈そうに言った。「おばあさま、これは私たち家族の問題ですから、大げさにしない方がいいと思います。海鈴の評判が台無しになったら、私が両親にどう説明すればいいのでしょう!ただの誤解なのですから……」

西村奥様は事情を察していた。海鈴は秋の子供だから、絶対に物を盗むはずがない。この警官がもごもごしているのは、きっと夏目彩美が手を回したからだろう。

この夏目彩美は本当に分かっていない。いつも養女を助けて実の娘をいじめる、こんな母親がいるものだろうか?

西村奥様が口を開く前に、警官は少し申し訳なさそうに言った。「西村奥様、お孫さんは、その、物を盗んでいません!」

皆は信じられない様子だった。

警官:「本当です、彼女は盗んでいません。」

高倉海鈴:「……」なら何であんなに困ったような態度を取ったの?まるで私が盗んだみたいじゃない。

久保真美は数秒呆然とし、表情が徐々に硬くなり、頭の中が真っ白になった。母は全て手配したと言ったのに、なぜこの警察官は味方してくれないの?

佐藤愛美は事態が決着したと思っていたが、警察官の言葉を聞いて、すぐに怒って言った。「盗んでいないなら、なぜそんなに困った様子なんですか?」

警察官は無邪気な表情で答えた。「困っていませんよ!ただ藤原奥様が何も盗んでいないのに冤罪を着せられているのが気の毒で、少し感慨深くなって、すぐに言い出せなかっただけです。」

佐藤愛美は言葉に詰まった。