第629章 血で命を救う、彼女は心から望んでいる

「海鈴、私たちはあなたの決断に干渉したくないけど、言わなければならないことがあるの。あなたの血で解毒するということは、あなたの命を燃やすことと同じよ。そして、二人の命が繋がることになる。もし彼が死んだら、あなたも生きていけないわ!」

高倉海鈴は黙って言葉を返さなかった。

「なぜおじいさまが当時、陸田さんの解毒を諦めたのか分かる?」

高倉海鈴は目を上げた。おじいさまの性格からすれば、血液で陸田さんを助けることができたなら、躊躇なく自分の血を捧げたはずなのに、なぜ諦めたのだろう?

「おじいさまは神の手を持つ名医の血で解毒すると、二人の命が繋がってしまうことを知っていたからよ。そして、彼はすでに60歳を超えていて、いつ世を去るか分からない。一方、陸田さんは若かった。もしそうしていたら、陸田さんの命も短くなってしまう。だから諦めて、自分の医術だけで彼女を助けようとした。でも、陸田さんが突然毒発作で亡くなってしまい、おじいさまは一生その罪悪感を抱えて生きることになった」

秋山明弘は眉をひそめながら諭した。「海鈴、あなたが藤原徹のことを深く愛しているのは分かるわ。でも、よく考えて。一度血が繋がってしまえば、後悔しても取り返しがつかないの。彼は毒を抑えるためにあなたの生命力を吸収することになる。もしかしたら...」

高倉海鈴は彼の言葉を遮った。「分かってます」

「本当に決心がついたの?」秋山明弘の声が少し震えていた。

高倉海鈴の目から一筋の涙が流れ落ちた。声は平静だった。「お兄さん、私のことを思ってくれているのは分かります。でも、私は藤原徹を愛しています。もし彼がこの世を去ってしまったら、私が生きていても意味がありません!たとえ彼が私の生命力を吸収したとしても、私は喜んでそうします!」

「もしかしたら将来後悔するかもしれません。でも、今この時、彼を救わなければ、一生悲しみと後悔の中で過ごすことになります。今この瞬間、自分の心に嘘をつきたくないんです」

秋山明弘は長い間黙っていたが、病室のドアの前まで歩いて行き、突然足を止めてゆっくりと口を開いた。「海鈴、私たちは家族だけど、あなたの選択に干渉する権利はない。すでに決心がついているなら、私には言うことはない。あなたがそう望むなら、私たちは支持するよ」