藤原徹は沈黙を保ったまましばらく経ち、冷静に言った。「全ての情報を封鎖しろ。何も起こらなかったことにする」
高野司は困惑した表情を浮かべたが、それ以上は尋ねず、藤原徹の指示通りに行動した。
……
翌朝、高倉海鈴が目を覚ますと、外から騒がしい声が聞こえてきた。
病院内では患者の安静のため騒ぐことは禁止されているのに、誰がこんな早朝から人の眠りを妨げているのだろう。
高倉海鈴は少々いらだたしげに起き上がり、隣の病室の藤原徹を見に行こうとした。病室を出るとすぐに、廊下に人だかりができており、高野司がその一団の応対をしているのが目に入った。
藤原徹が入院しているのはVIP病室で、病室の外には専用の応接室があり、その一団はちょうどそこに座りこんでいた。
高倉海鈴は入口に立ち、彼らを注意深く観察した。数組の夫婦で、子供も連れている。藤原徹のお見舞いに来たと言いながら、その目には少しの心配の色も見えなかった。