第669章 大阪の名家も彼女を一目置く

「この奥様は見覚えがないけど、あの厳格な男性が誰かは知っています。あの方は西村家の当主、西村沙織です。元々は夏目姓でしたが、西村奥様と夏目岩さんの長男です。西村奥様が離婚した後、子供たちを連れて西村家に戻り、夏目昴から西村沙織に改名し、西村家の当主になりました」

「つまり、この方は久保の奥様、夏目彩美の実の兄ということですか?そしてこの奥様は夏目彩美の母親、西村奥様ということですね?彼らは皆、西村家の方なのですか?」

この言葉に、皆が息を呑んだ。西村家の方々が揃って集まるとは、一体何をするつもりなのか?

西村奥様は平然とした表情で言った。「久保家の方が海鈴を嫌うのは、久保家の方の問題です。海鈴には何の落ち度もありません!夏目彩美、余計なことを言わないで。あなたたちが海鈴を望まないのは構いません。どうせ海鈴には西村家の愛情があれば十分です。彼女は西村家唯一の令嬢なのですから、久保家のお嬢様の地位など奪う必要もありません」

「海鈴は誰とも争う必要はありません。小さな久保家など眼中にない存在です。彼女が望むものなら、西村家が全て与えることができます。あなたたち久保家など眼中にないのです」

「これからは海鈴が西村家のお嬢様です。大阪の名家は皆、彼女に敬意を払わなければなりません。久保真美と久保家のお嬢様の座を争う必要などありません」

西村奥様の冷たい表情が和らぎ、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。「海鈴、おばあちゃんのところに来なさい」

人々は驚愕の表情で目を見開いた。久保家が高倉海鈴を嫌うのは、彼女が入門する前に皆の反感を買っていたからだと聞いていた。そのため久保家の方が彼女を受け入れたがらなかったのだ。

しかし今、西村奥様は西村家の子孫たちを連れて高倉海鈴の後ろ盾となり、さらに世間に向かって高倉海鈴が西村家のお嬢様であり、小さな久保家など眼中にないと宣言したのだ。

権力も財力も、久保家は西村家の敵ではなかった。何百年もの間、西村家は繁栄を続けてきたが、久保家は平凡な存在に過ぎず、今では会社も困難に直面している。両家には比較の余地すらなかった。

しかも高倉海鈴の後ろには西村家だけでなく、藤原徹もいる。この二つの巨大な勢力が高倉海鈴の後ろ盾となっている以上、誰が彼女に敵対できようか。