高倉海鈴は藤原徹の腰に手を回し、甘えるように言った。「徹~私も行きたいの!」
藤原徹は暫く黙っていたが、微かに笑みを浮かべた。「行きたいなら代価を払わないとね。藤原奥様が僕にお願いすれば、連れて行ってあげるよ」
高倉海鈴は眉をひそめた。さっき既に甘えたのに、この意地悪な男はまだ彼女を困らせようとしている。本当にひどい。そこで直接冷たく鼻を鳴らした。「もう行かないわ!」
——'あなたが行ったら、私一人で行くわ!'
藤原徹は高倉海鈴の心の声を聞いて、思わず笑みを漏らした。優しく彼女の髪を撫でながら、「藤原奥様、私たちは今日の出し物の主役だよ。そう簡単に登場するわけにはいかないだろう?事態が大きくなってから行くのが丁度いいんだ」
「本当は9時まで待とうと思っていたんだけど、君が行きたくないなら仕方ないね。ゆっくり休んでいてくれ。私は先に行くよ」
高倉海鈴はそれを聞いて、急いで彼の手を掴み、媚びるように見つめた。「行く、行くわ!」
藤原徹は溺愛するような表情で彼女を見つめ、その後引き出しから黒い箱を取り出し、中からピンホールカメラを取り出して自分のスーツのボタンに付けた。
高倉海鈴は不思議そうに彼を見つめた。「何をしているの?」
藤原徹は眉をひそめた。「彼は山田莉央が崩壊する場面を撮影させようとしているはずだ。彼が目覚めた後で見られるように。やっぱり私が撮影しよう」
高倉海鈴は目を丸くした。「どうしてわかったの?」
藤原徹の手の動きが一瞬止まった。自分も同じことを考えていたなんて認めるわけにはいかない。撮影して後でいつでも観賞できるように、気分が悪い時に取り出して見られるように。
暫くの沈黙の後、藤原徹は何気なく答えた。「彼のことはよく分かっているからね」
「彼はこのチャンスを私に譲るために一晩中眠れなかった。こんな素晴らしい場面を見られないから、君に撮影させようとしているんだろう。でも私はそんな子供じみたことはしない。こんなつまらないものを見る気なんてないよ」
言葉が落ちると、寝室全体が静かになった。
高倉海鈴は口角を引き攣らせた。そんなこと言って、自分で恥ずかしくないの?あなたたち二人の性格がよく似ているのを知らないとでも思っているの?彼がすることは全部あなたの本心なのよ。
午前9時。