山田莉央は高倉海鈴を憎々しげに睨みつけ、その後藤原徹の方を向いて言った。「徹、今回だけでいいから、お母さんの言うことを聞いて!怜菜はとても素直で親孝行な子よ。あなたが仕事で忙しくて私に会いに来られない時も、怜菜に藤原の本家に来てもらえるわ。あの高倉海鈴みたいに何ヶ月も顔を見せないのとは大違いよ」
青山怜菜は恐怖に満ちた目で藤原徹を見上げた。彼女の脳裏に、藤原徹が銃を突きつけて脅す光景が浮かんだ。彼の指示に従わなければ、バラバラにされるのは間違いないと分かっていた。
彼女は震える唇で言った。「楓おばさん、私は名分なんていりません。藤原社長と一緒にいられるだけで、他は何も…」
「怜菜は本当に素直ね。こんな素敵な子が徹を好きになってくれるなんて、本当に彼の幸せよ!楓おばさんは本当にあなたのことが気に入ったわ。好きな人がいるなら、積極的に行動を起こすべきよ!」
藤原明は心の中で思った:そうだ!あなたの言う通りだ。好きな人のために積極的に行動を起こすべきだ。たとえ相手が既婚者でも愛人になれるし、名分なんて要らないと。だからこそ青山怜菜が気に入ったんだろう。二人とも人の家庭を壊す愛人同士なんだから!
山田莉央は青山怜菜の手を引いて前に出た。「怜菜、早く徹の側に行きなさい」
青山怜菜は素直に前に進み出た。山田莉央の当初の計画では、怜菜が藤原徹に酒を勧める際に薬を入れるはずだった。しかし今回、彼女は四杯の酒を用意し、そのうちの一杯に薬を入れ、自分で一杯を取り、山田莉央にも一杯渡した。
その後、彼女は一杯の酒を持って藤原徹の前に進み、媚びるように言った。「藤原社長、お酒を一杯お勧めしてもよろしいでしょうか?私のことをお好きでなくても構いません。このお酒を飲んでいただいた後は、もう二度とお邪魔いたしません」
藤原徹はその酒を受け取り、薄い唇を開いて言った。「いいだろう」
青山怜菜は最後の一杯を手に取り、藤原俊介の側に行った。手首が少し震え、唇を噛みながら、「藤原おじさん、このお酒を…お受け取りください」
この最後の一杯こそが薬入りの酒だった。山田莉央も藤原俊介も青山怜菜を疑うことはなく、ただの形式的な挨拶だと思っていた。誰が藤原俊介の酒に薬が入っているとは思うだろうか。