第680章 彼にもこの世界を見る資格がある

藤原徹は淡々と言った。「私もそう思っていた。彼に代わりに行かせるのが一番いい方法だ」

高野司は眉をひそめて尋ねた。「社長、彼を目覚めさせたままにして、完全に社長の立場を奪われる心配はないんですか?」

「この体は私だけのものではなく、彼のものでもある。それに、彼は私のために多くの問題を解決してくれた。彼を永遠に闇の中で眠らせておくわけにはいかない。彼にもこの世界を見る資格がある」

高倉海鈴は階段を降りてきた時、二人の会話を耳にした。藤原徹が戻ってきたことは知っていたが、彼がこのような言葉を口にするとは思わなかった。やはりこの二つの人格は互いに利益をもたらし合っており、彼らの間に競争関係は存在しないのだ。

彼女は部屋に戻り、電話をかけた。「叔父さん、お聞きしたいことがあります」

高橋川広は高倉海鈴の説明を聞いて、少し驚いた様子で言った。「つまり、藤原徹には二重人格があって、その二つの人格は似ているけれど、記憶に違いがあるということ?」

「はい」

高橋川広はため息をついた。「海鈴、彼の解毒後、何か特別なことをした?あるいは何か特別なことが起きた?」

高倉海鈴は答えた。「いいえ、私は彼の体内の毒を一時的に抑制しただけです。特別なことは何もありませんでした。叔父さん、もしかして彼に別の人格が現れたのは、毒のせいということですか?」

「海鈴、藤原徹との最も大きな違いは、藤原徹が夜になると失明するのに対して、彼は何の影響も受けないということに気付いていないか?ひょっとすると、藤原徹がこの毒と戦っているため、彼を守るために別の人格が生まれた可能性があるんだ」

高倉海鈴はその説明に納得がいった。

「本来なら、その人格は何年も現れていなかった。今の藤原徹は十分に強くなり、誰かの保護も必要としないからだ。今回別の人格が現れたのは、彼の体内の毒のせいだ。それ以外にもう一つ可能性がある」

高橋川広は真剣な表情で言った。「もし君が藤原徹の解毒を続けるなら、いつかは彼の体内の毒が完全に除去される。そうなれば、もう一つの人格は完全に消えてしまうだろう」

その言葉を聞いた高倉海鈴は、全身が震えた。