第749章 豪華1号個室

「さっきまでよく喋れたのに?謝れって言ったら、どうして黙っちゃうの?」木村香織は冷ややかに言った。

伊藤洋美は不満そうに言った。「私たちは誤解しただけで……」

「高倉さん、申し訳ございません」伊藤の奥様は謝罪し、優雅に続けた。「仁美は、あなたがいらっしゃらないと思っていたので、突然のご登場に興奮して言葉を誤ってしまいました。どうかお気になさらないでください」

その後、伊藤の奥様はゆっくりと振り向き、皆に向かって深々と一礼した。「皆様、大変申し訳ございません。お時間を取らせてしまいました」

高倉海鈴は驚きの色を目に浮かべた。この伊藤の奥様は、まるで良家のお嬢様のようだった。

伊藤洋美は高倉海鈴を険しい目つきで睨みつけた。前回、高倉海鈴に手首を捻られ、長い間療養していた。今でも手首が時々痛むのに、今回も高倉海鈴は厚かましくも香り亭まで追いかけてきた。

彼女の怒りはさらに増し、大声で叫んだ。「高倉海鈴!あなたは香り亭に入れません!木村香織に招待されたからって関係ない!伊藤家を敵に回したあなたは、入れないんです!」

皆の視線が伊藤洋美に集まった。伊藤の奥様は目を曇らせた。この愚か者は本当に役立たずで、今日は仁美の師匠拝見の宴なのに、予期せぬ事態を起こしてしまった。

今、高倉海鈴とここで言い争っても、高倉海鈴にとっては何でもないことだが、皆に伊藤家が度量の狭い家だと思われてしまう。

伊藤の奥様は急いで制止した。「洋美、いい加減にしなさい!」

その後、彼女は穏やかな表情で高倉海鈴を見つめ、「高倉さん、本当に申し訳ございません!お誕生日会のお邪魔をしてしまって。どちらの個室でしょうか?もしよろしければ、後ほど仁美が伺わせていただき、改めて謝罪と、木村さんへのお誕生日のお祝いをさせていただきたいのですが」

木村香織はうんざりした表情を浮かべたが、伊藤の奥様の態度が良く、終始笑顔で、しかも目上の方なので、相手の面子を潰すわけにもいかず、「3号室です」と答えるしかなかった。

それを聞いた伊藤洋美は、すぐにプッと笑い出した。「それって近いわね!私たちは1号室よ」