第753話 これが縁だよ！

斎藤雅也は体を震わせながら、慌てて命令した。「どんな方法でもいい、お前の代わりに絵を描いた人を必ず見つけ出せ！今すぐ探しに行け！」

……

一方、高倉海鈴は廊下に来て、藤原徹に電話をかけた。

藤原徹は彼女の話を聞いても表情を変えなかった。実際、誰がその絵を持ち去ったかなど気にもしていなかったし、売られても構わないと思っていた。しかし、伊藤仁美がその絵を盗み、それを利用して斎藤雅也の弟子になったとは思いもよらなかった。

男は少し低い声で言った。「気にする必要はない。私が対処する」

高倉海鈴は好奇心を持って尋ねた。「藤原さん、私たちが一緒に描いたあの絵、木村の奥様も冬島志津のスタイルに似ていると言っていましたが、もしかしてあなたも冬島志津のファンなんですか？」

「どうして？」

高倉海鈴は疑いを抱きながら追及した。「あなたと冬島志津は一体どういう関係なんですか？もしかして知り合いなんですか？」

藤原徹は嘲笑うように言った。「藤原奥様、あなたの頭の良さと鈍さ、どちらを褒めればいいのか分からないね。まだ気づいていないのかい？」

男は口元に笑みを浮かべた。高倉海鈴なら自分が冬島志津だと気づくはずだと思った。二人の名前にはどちらも「冬」の字があるのだから、これも縁というものだ！

彼の言葉を聞いて、高倉海鈴は突然悟ったように言った。「もしかしてあなたは彼の弟子なんですか？」

高倉海鈴は興奮して言った。「どうやって知り合ったんですか？彼はどんな人なんですか？何歳くらいなんですか？会うことはできないんですか？」

藤原徹は「……」と黙り込んだ。自分はそんなにも冬島志津らしくないのだろうか？

電話を切った後、高倉海鈴が立ち去ろうとした時、背後から優しい声が聞こえてきた。「海鈴？」

伊藤仁美は笑顔で彼女を見つめながら言った。「誰と電話してたの？冬島志津の話をしてたみたいだけど、あなたも冬島志津が好きなの？」

「実は私、あなたが絵を描くのが好きだってずっと知ってたの。だから絵を習わない？って聞いたのよ。あなたが望むなら、素晴らしい先生を紹介することもできるわ。今日の師匠拝見の宴に来ている方々は皆、有名な画家なのよ。こんなチャンスを逃すわけにはいかないでしょう！」

高倉海鈴は振り向き、冷たい眼差しで、嘲笑うような笑みを浮かべた。