第775話 兄貴の目はいつから見えなくなったの？

「妹弟子が質問を終えたので、私も少し気になることを聞きたいのですが」藤原徹は意味ありげな笑みを浮かべながら、低い声で言った。「香水についてよく知っているようですね？それにサリーの性格まで把握しているようですが」

高倉海鈴の表情が一瞬こわばった。彼女は心虚になって目を伏せ、「何を気にすることがあるの！もちろんあなたのことを心配して、少し調べただけよ！忘れないで、私は一流のハッカーなんだから！」

ここまで言うと、高倉海鈴は自信を取り戻したように、真剣な表情で続けた。「そういうことよ！あなたが前に陸田グループが新しい香水を発売すると言ったから、香水に関することを調べたの。ついでにその香水調香師のサリーのことも調べたわ。あの女性の人柄は本当によくないわ！」

「それに、彼女の実力もたいしたことないわ。陸田グループの新作香水、あなたも嗅いだでしょう？普通だと思ったはず。彼女の国際的な名声は、単なる宣伝で作り上げられたものよ！」

「彼女は宣伝ばかりに気を取られて、香水の研究開発に時間を割けるはずがないわ。こんなことは指一本動かすだけで分かることよ。不思議なことなんて何もないわ！」

高倉海鈴は心虚を隠すために長々と説明し、最後に試すように藤原徹の様子を窺った。

藤原徹は平然とした表情で、さらりと言った。「私の考えすぎだったようですね。藤原奥様も...香水を調合できるのかと思いましたが」

高倉海鈴は慌てて手を振った。「そんなの私にできるわけないわ！私のことを買いかぶりすぎよ！」

その後、彼女は急いで話題を変えた。「そうそう、お兄さんたちが渡道ホールに私に会いに来るの。夜には家に寄るって」

藤原徹は数秒間呆然とした。彼らは前に渡道ホールに来るとは言っていなかったはずだ。なぜ突然訪ねてくることになったのか、しかも夜に？

...

青山家の別荘。

青山博之と鈴木薫が居間に座っていた。二人は向かい合って座り、青山博之は目を細めて言った。「薫、その人物が最後に渡道ホールに現れたのは確かか？」

鈴木薫は冷たい目つきで答えた。「霊峰閣は決して間違えない」