第814章 悪を懲らしめ善を守る

高倉海鈴は淡々と言った。「私は確かに先ほど陸田康夫を二度平手打ちしましたが、彼をあんなにボロボロにしたのは藤原徹です。私は繊細な女の子ですから、そんなに乱暴なことができるはずがありません」

「陸田康夫さんも運が悪かったですね。休憩室に入った時に丁度藤原徹と出くわして、入るなり捕まってしまったんです！陸田さん、あの男は性根が腐っていて、陸田グループで悪事を働き、多くの若い女性を苦しめていたと聞きました。私たちが彼を懲らしめたのは、悪を除いて善を為したようなものですよね？」

陸田康夫はこの言葉を聞いて、血を吐きそうなほど怒り、顔を歪めて叫び声を上げながら、激しく体を揺すぶった。そのまま体のバランスを崩して床に倒れ込み、傷口から血が染み出して床に滴り落ちた。今の彼は、まるで屠殺場の豚のようだった。

セレブたちはこのような血なまぐさい光景を見たことがなく、全員が鼻を押さえながら数歩後ずさりした。普段は紳士に見える藤原徹がこれほど残虐な手段を使うとは思いもよらなかった。

もし彼らが不倫現場を押さえに来なかったら、陸田康夫は藤原徹に殴り殺されていたかもしれない。

藤原徹は冷静な表情で高倉海鈴を後ろに庇い、その瞳には冷たい殺意が満ちていた。その場にいた人々は怖気づいて頭を下げ、誰も声を発することができなかった。

しばらくの沈黙の後、男は薄い唇を開いて言った。「これは警告に過ぎない。今後誰が藤原奥様に意地悪をしても、今以上の目に遭わせる」

言い終わると、藤原徹は陸田進と夏目小夜子に視線を向けた。夏目小夜子は体を震わせ、慌てて頭を下げた。

この時、陸田康夫は極度に衰弱し、体中の傷が疼いていた。床に横たわったまま何とか呼吸を保っていたが、誰も彼の縛りを解く勇気はなかった。

藤原徹は床に倒れている陸田康夫を一瞥し、冷たい眼差しで命じた。「ここをきれいに片付けろ。私たちは行く」

そう言って、彼は高倉海鈴の手を引いて立ち去ろうとしたが、高倉海鈴は不満そうな顔をして言った。「まだ陸田家に謝罪してもらわないと！私が香水パッケージのデザイナーだと知っていながら、わざと罠を仕掛けてきた。今回は陸田康夫一人を懲らしめただけで、私は全然満足していません」

陸田進は床で息も絶え絶えの男を見て、額の血管を脈打たせた。これでも満足できないのか、一体どうすれば気が済むというのか？