第852章 金賞受賞者

道中、藤原徹は尋ねた。「以前、高野司を訪ねたのはこのことのためだったのか?」

高倉海鈴は頷いた。「高野司は法律が専攻だから、私のために小さな手助けをしてもらって、著作権証明を作ってもらったの」

藤原徹は愛情のこもった笑みを浮かべた。「藤原奥様を見くびっていたようだな。すでに後手を打っていたとは。この世で藤原奥様以上にこの古琴にふさわしい人がいるだろうか?」

彼は足取り確かに前を見つめながら、優しい声で言った。「安心して、高野司に山田透のことを注意してもらうから、彼があなたに迷惑をかけることはないよ」

高倉海鈴は頬を赤らめ、恥じらいの表情を見せた。藤原徹の目には、自分がこんなにも頼りない少女に映っているのだと気づいて。

夫婦が車に乗り込むと、高倉海鈴が携帯を取り出した途端、画面が暗くなり白いコードが浮かび上がった。忠司と沙織の兄妹から連絡が来たのだ。実は彼女はこの兄妹とあまり仲が良くなく、以前は沙織といつも喧嘩をしていたし、墨野静のことで確執もあった。しかし以前、久保朱里が高倉彩芽の悪評を消そうとした時、この兄妹は躊躇なくそれを拒否し、ダークウェブのハッカー全員に久保朱里の依頼を受けないよう命じたのだ。

だから過去の恩義もあり、この頼みは断れない。それに、この件は彼女にとって簡単なことだった。伊藤仁美が佳樹を騙っているのを暴くだけだし、そうするべきだと思った。

藤原徹はゆっくりと目を上げた。「手伝うつもりか?」

「手伝うというほどでもないわ。他人の家庭の事情には関わりたくないけど、伊藤仁美は何度も私に嫌がらせをしてきたし、今回は私の作曲家としての身分まで騙ったから、反撃する時よ」

高倉海鈴は忠司にメッセージを返し、落ち着いた声で言った。「著作権証明はもう用意できてるわ。でも、もう一人手伝ってくれる人が必要で、その人は数日後に東京に到着するの」

藤原徹は微笑んだ。藤原奥様はすでに罠を仕掛けていたようだ。忠司が手伝いを頼もうが頼むまいが、伊藤仁美に代価を払わせることは決めていたのだ。この伊藤仁美は誰に喧嘩を売るのかと思えば、よりによって藤原奥様に喧嘩を売るとは。

「私みたいな優しくて可愛い女の子を、伊藤仁美がいじめようとするなんて。そうなら、私も容赦しないわ。あとで泣きすぎないことを願うわね」高倉海鈴は意味深な笑みを浮かべた。