第897章 最適任者

鈴木琴美は元々高倉海鈴のことが気に入らなかったが、昨日の不倫事件に加えて、今日の夏目小夜子の入社で、藤原社長がもう彼女のことを好きではないことは明らかだった。いつ見捨てられてもおかしくない状況だった。

しかも鈴木琴美は既に夏目小夜子という大木に縋り付いていたため、お茶を飲んで花を愛でるだけの無能な高倉海鈴をますます軽蔑するようになっていた。

「藤原奥様、最高経営責任者のポジションは藤原社長が友人のために空けていたことはご存知でしょう。その方は嵐エンターテインメントの会長の友人なのです。もしあなたがその席を奪えば、藤原社長の顔に泥を塗ることになりますよ」

「両社が合併した後、最高経営責任者は全ての業務を管理することになります。この地位は会社の将来の発展に関わる重要なポストですから、適当な人物に任せるわけにはいきません。藤原社長がいらしても、あなたの好き勝手にはさせないでしょう。まして本当の最高経営責任者が既に着任しているのに、あなたは藤原奥様という立場を利用して追い出そうとでもするのですか?」

周囲の視線には軽蔑の色が満ちていた。夏目さんが既に着任しているというのに、藤原奥様が厚かましくもポストを奪いに来るなんて、本当に分不相応だ。自分の能力も顧みずに、夏目さんと争うなんて何の資格があるというのか?

「もし今後コネだけで出世できるなら、この会社は存続する必要もありません。私たちのような自分の努力で這い上がってきた者には全く公平ではありません。誰が会社のために命を懸けて働くでしょうか」

「そうですよ!私たちは何段階もの選考を経てヘブンリーに入社したのです。能力は当然藤原奥様より上です。あなたが最高経営責任者になれるなら、私たちだってなれます!」

興奮する人々を見て、鈴木琴美は満足げに微笑んだ。「夏目さんこそが最高経営責任者に最適な人選です。藤原奥様、あまりに恥ずかしい思いをしたくないのでしたら、早めに退散なさったほうがいいですよ。藤原社長に直接追い出されるのを待つより、その方が面目が保てるでしょう」

高倉海鈴は彼女の口から「夏目さん」という言葉を聞いて、突然はっとした。もしかしてこの夏目さんが、木村江の言っていた人物なのだろうか?