第930章 人を利用して殺す

夏目小夜子は急いで前に出て慰めた。「おばあさま、お体に気をつけてください！私たちは今日招待状を持って来たんですから、藤原社長は西村家に私たちを困らせることはないはずです。それに、それは昔の恨みですし、西村奥様はなぜまだこだわっているのでしょうか。少し度量が狭すぎるのではないでしょうか」

夏目城は表情を少し変え、美咲はまだ昔の恨みを忘れられないのだろうと思った。彼らは数十年も離婚しているのに、彼女はまだ一人で、再婚もせず、きっと昔の情を忘れられないのだろう。今は孫娘の幸せのため、夏目家の将来のために、美咲と対立せざるを得ない。

そう言えば、高倉海鈴はそもそも西村家の人間とは言えず、西村家で育ったわけでもない。なぜ美咲がそれほど海鈴を可愛がるのか理解できない。彼女の何がそんなにいいのだろう？高倉家の方さえも彼女の身分を認めようとしないのに、彼女は誰にも必要とされない野良娘に過ぎない。どうして高貴な藤原徹に相応しいというのか？

藤原徹は藤原財閥の社長だ。彼の妻は小夜子のように教養があり、落ち着いた態度の女性であるべきで、海鈴のような恥ずかしい思いをさせるような妻ではない。すぐに藤原徹は彼女に飽きるだろう。

夏目小夜子は優しく注意を促した。「おじいさま、おばあさま、パーティーがもうすぐ始まります。中に入りましょう。私も藤原社長がどう言うか聞いてみたいです。どうあれ、嵐エンタメは夏目家のものですし、婚約も私のものです。海鈴にはそれを否定する余地はありません」

数人がうなずき、一緒にパーティー会場に入った。

「小夜子？」

その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。夏目小夜子が振り返ると、背の高い男性が自分に向かって歩いてきた。男性は熱心に声をかけた。「僕は田中川だよ！同級生じゃないか！」

田中川？夏目小夜子は数秒考え込んでから思い出した。田中川は学生時代から彼女のことが好きだった。まさかこんな場所で旧知の人に会うとは。

夏目小夜子は突然目を輝かせ、良いアイデアを思いついた。彼女は目に涙を浮かべ、悲しそうに俯いた。「申し訳ありません。最近少し精神的に不安定で、あなたのことが分からなかったんです。どうか気にしないでください」

田中川は彼女の憐れな様子を見て、すぐに尋ねた。「何かあったの？」