司会者の説明で、会場の気まずい雰囲気がようやく和らいだ。青山博之は無表情だったが、その目には軽蔑の色が満ちていた。
最終的な評価は審査員の採点と観客の支持率を合計したもので、結果はすぐに発表され、夏目茜は予想通り首位を獲得した。
「夏目茜さんの暫定一位、おめでとうございます。しかし、本日の番組では、もう一人の覆面デザイナーをお招きして、作品を披露していただきます。最終的な勝者は誰になるのか、ご期待ください!」
「夏目茜さんという強力なライバルに対して、この覆面デザイナーはどのような素晴らしい作品を見せてくれるのでしょうか?夏目茜さんの圧倒的な勝利か、それとも覆面デザイナーの逆転劇か?」
夏目茜は顎を上げ、自信に満ちた笑みを浮かべた。最終的な勝者は彼女しかいない。スポンサーが5000万円を投資しており、この番組は彼女のために作られたようなものだった。結果は既に内定していた。
そのとき、スタッフが赤い布で覆われたドレスを舞台裏から運んできた。観客の期待に満ちた視線の中、赤い布が取り除かれ、中の作品が姿を現した。このドレスも完璧だったが、ただし……
観客たちはすぐに気付いた。「おかしいじゃないか!これは夏目茜さんの作品と同じじゃないか?」
「スタッフが衣装を間違えたんじゃない?」
「違う!よく見てください。このドレスの生地と色は夏目茜さんのとは違いますが、デザインは全く同じです。」
夏目茜も呆然とした。彼女は急に気付いた。このデザイナーは元のデザイン画通りに作品を完成させたのだ。本当に分不相応な行為だ。
同じ作品が二つ現れた時、一方は必然的に盗作と判断される。しかし、彼女の知名度はそのデザイナーよりも高く、先に舞台で披露したのも彼女だった。観客は自然と先入観を持つだろう。さらに番組スタッフは彼女の味方で、お金を受け取っているのだから、当然彼女を擁護するはずだ。
このデザイナーの作品は生地が粗く、光沢もない。作品が自分のものだと主張しても、誰が信じるだろうか?
あの生意気な女が舞台の前で騒ぎを起こすなんて。それなら、社会的に破滅する味を教えてやろう。これからはもうデザイナーとしてやっていけないだろう。
スタッフは仕方なく作品を最前列に運び、夏目茜の作品と並べた。二つのドレスは色と素材にわずかな違いがあるだけで、司会者も呆然としていた。