第958章 空降デザイナー

「私の体内の毒は海鈴の血でしか解毒できないが、完全に毒を除去することはできない。これほど長い時間が経っても顕著な効果は見られず、ただ毒が発作を起こさないようにするだけだ。しかし、海鈴はどんどん憔悴していくので、私は解毒を諦めることにした。だが、海鈴にはこのことを知らせるわけにはいかない」

藤原徹はゆっくりと目を上げ、青山博之を見つめる瞳に笑みを浮かべた。「私が青山さんにこのことを打ち明けたのは、青山さんが何事においても海鈴のことを第一に考えてくれることを知っているからです。だから必ず私の秘密を守ってくれるでしょう。海鈴には、あなたたち兄たちがいて本当に幸せですね」

青山博之は彼の意図を理解し、頷いて言った。「分かりました。秘密は守ります。ですが、本当にT市に行くつもりですか?実は私も海鈴をしっかり守れますから、あなたが無理して付いてくる必要はないんですよ」

藤原徹は微笑んで答えた。「私には本当に用事があるんです。海鈴のことは青山さんにお任せします」

……

一行がT市に到着すると、藤原徹は二人と別れた。高倉海鈴は特別招聘デザイナーとして、最初から収録に参加する必要がなかったため、そのまま控室で待機することになった。

番組に参加する数人のスターは知名度に応じて個室の控室が割り当てられたが、高倉海鈴はスターではないため、他の人と共用の控室を使うことになった。しかし今は皆が番組収録に行っているため、控室には彼女一人しかおらず、椅子にゆったりと寄りかかって休んでいた。

あの日、兄と藤原徹が一体何を話していたのか、とても気になっていた。しかし、どんなに聞いても二人は一言も明かそうとしない。二人の間には一体どんな秘密があるのだろうか?

高倉海鈴は考えても考えても手がかりが掴めなかった。突然、外から呼び声が聞こえた。「高倉さん、あと20分でデザインエリアに移動していただきます。準備をお願いします。それと、特別招聘デザイナーはステージに上がる際にマスクを着用する必要があります。審査員の採点が終わってから、マスクを外すことができます」

高倉海鈴はテーブルの上のマスクを見て返事をし、衣装を着替えた。

……

その時、隣の豪華な控室では。

ピンク色のデザイン性の高いドレスを着た女優が高慢な態度で尋ねた。「今回の番組に特別招聘デザイナーが来るって聞いたけど?」