第989章 誰が遺品を壊したのか?

夏目城は顔色を変え、慌てて警備員に下がるよう手を振り、その後、隣の夏目久に耳打ちを数言し、約30秒後、優しく口を開いた。「海鈴、何を言っているんだい!私たちがあなたを害するわけがないだろう?みんな冗談を言っているだけだよ。」

「さっき藤原社長は来ないって言ったじゃないか?もし彼が来たなら、家族と一緒に食事をして、賑やかに過ごせばいい。みんなもあなたの夫に会いたがっているんだよ!」

高倉海鈴は冷ややかに笑った。やはり夏目城は藤原徹を恐れているようだった。実際、彼女は藤原徹が来ているかどうか確信が持てなかったが、彼の性格からすれば、少なくとも高野広か高野司を派遣して彼女を守らせているはずだった。

「母の遺品を返してほしいだけよ。今すぐに!」高倉海鈴の口調が急に鋭くなった。

夏目城は眉をひそめた。もし藤原徹が本当に来ているなら、海鈴に酒を強要することはできない。そうすれば彼女は必ず酒に毒が入っていることに気付くだろう。そうなれば藤原徹が乱入してきて、事態は面倒になる。

彼は一時的に怒りを抑えて言った。「執事、秋の遺品を持ってきなさい。」

今回は数分もしないうちに、執事はボロボロの箱を持ってきた。「ご主人様、見つかりました。」

高倉海鈴は箱を開けた。中の物は散らかっていて、アルバム一冊とスケッチブック一冊があった。おそらく夏目城の言っていたデザイン画だろう。彼女がアルバムを開くと、すぐに表情が変わった。

母の写真は全て誰かにナイフで切り裂かれており、それぞれの切り込みは非常に力強く、さらに赤いペンで母の顔に「売女」「死ね」といった文字が書かれていた。その人物の母への憎しみと呪いが見て取れた。

高倉海鈴の瞳孔が急に縮んだ。夏目の祖母を見上げると、穏やかだった瞳に殺意が満ちていた。全身から濃い殺気を放っていた。夏目の祖母は彼女の眼差しを見て、体を震わせながら数歩後ずさりし、おびえた様子で言った。「なぜそんな目で私を見るの?私がやったわけじゃないわ。」

高倉海鈴は立ち上がり、彼女にゆっくりと近づいていった。冷たい目で彼女を見つめていた。

外にいた高野広は思わず唾を飲み込んだ。奥様が怒る姿は本当に恐ろしいと思わずにはいられなかった!社長が彼女を怒らせないのも当然だ。