第992章 彼女が開発した解毒薬

高倉海鈴はソファーにだらしなく座り、鋭い目つきで夏目小夜子を見つめた。「そのとき、藤原社長にどう説明するつもりなの？彼の妻をここに監禁するなんて、彼の存在を無視しているの？」

夏目小夜子は一瞬言葉に詰まり、緊張し始めた。まさか高倉海鈴は彼らの計画に気付いているのだろうか？

「海鈴、ゆっくり休んでね。すぐに藤原社長が迎えに来るわ。もし来なくても、おじいさまが家まで送ってくれるから。きっと疲れているのよ。余計なことは考えないで」

そう言いながら、夏目小夜子は高倉海鈴の目をじっと見つめた。薬の効果がすぐに出るはず。彼女はもう長くは持たない。案の定、高倉海鈴の体が揺らめいた。

高倉海鈴は心の中で冷笑した。あのワインを飲んだ時から、この毒が何なのか分かっていた。藤原徹の体内にある毒と同じもので、体内に入るとすぐに人を眠らせる毒だ。夏目家の人々はこの時間を利用して彼女の体で薬を試すつもりだろう。ただし、夏目家の人々が知らないのは、彼女は百毒不侵で、しかもこの毒についてよく知っているということだ。

高倉海鈴は毒が発作する時間を計算し、全身の力が抜けたようにソファーに倒れ込み、目を閉じた。

夏目小夜子はその場に立ち、彼女を観察した。毒が効いて、もう抵抗する力がないことを確認してから、やっと安心して部屋を出て、ドアに鍵をかけた。

しばらくすると、夏目家の他の人々が入ってきて、夏目城は薬丸を取り出して高倉海鈴の口に入れた。

夏目の祖母は不満そうに口を開いた。「城、これは医師会が作った薬よ。全部でもそんなに数がないのに、高倉海鈴に与えるなんてもったいないわ！」

夏目城は笑いながら説明した。「何も分かっていないね！薬をくれた人が言うには、毒を受けた人がこの解毒薬を飲んで効果が出れば、その人の血液には解毒作用があるんだ。私たちは彼女の血を飲んで解毒できる。これは百個の解毒薬よりも効果があるんだよ」

夏目の祖母はその話を聞いて興奮した。「それなら私たち家族全員が救われるのね？」

なるほど、夏目家はずっとこのことを考えていたのだ。これは村上健治が広めた情報とは少し違うが、結局のところ彼女を解毒薬として利用することには変わりない。一体誰が夏目家にこの情報を伝えたのだろう？医師会の人間なのか、それとも医師会を騙る誰かなのか？