第1002章 高倉海鈴は夏目家の解毒剤

高倉海鈴は困り果てた表情で言った。「私は何も騒ぎ立てていませんよ！むしろ夏目の祖母が先に私を郊外に追いやろうとしたんです。今度は私が彼女を郊外に追いやったところで何が悪いんですか？彼女が間違いを犯して、謝罪一つで軽々しく済ませられるとでも？夏目の祖母に苦労させたくないお気持ちはわかります。だから私もこれ以上強くは言いません。おばあさまは夏目家に残ればいい。私たちはここを去ります。もう二度と訪れることはありません！」

「徹、執事に伝えて。これからは夏目家の方が渡道ホールに来ても一切お会いしないように。夏目家とは一切関わりたくないわ！」

藤原徹は応じた。「わかりました。渡道ホールは藤原奥様のお家です。誰にお会いになりたくないとおっしゃれば、そのようにいたします。夏目家の方々とは二度と会わせません」

「夏目さま、海鈴がここまで言うなら、私も夏目の祖母の件はこれ以上追及しません。どう対処なさるかは、もはや私たちの関知するところではありません」

夏目城の心臓が縮み上がった。

いけない！だめだ！

今や高倉海鈴は家族全員の解毒薬なのだ。彼女の体内の解毒薬はすでに効果を発揮している。医師会の人々によれば、夏目家と血縁関係のある者が解毒薬を服用して解毒されてはじめて、夏目家の人々も解毒できるという。彼女は夏目家全体の希望なのだ。このまま去られるわけにはいかない。

もし高倉海鈴が夏目家との関係を絶ち、これ以降夏目家の人々と会わなくなれば、どうやって海鈴の血液を手に入れればいいのか。どうあっても海鈴を引き止めなければならない。些細なことで好機を逃すわけにはいかないのだ。

夏目城は一瞬黙り込み、顔色を青ざめさせながら、しぶしぶ口を開いた。「では直美を郊外で暮らさせましょう。心を落ち着かせるためにも。海鈴がこの件を忘れたら、また呼び戻せばいい」

夏目の祖母の表情は一瞬にして凍りついた。まるで雷に打たれたかのように、信じられない表情で夏目城を見つめた。長年連れ添った夫婦なのに、高倉海鈴のために自分を郊外で暮らさせようというのか？

そう考えた途端、夏目の祖母は胸が詰まる思いがし、目の前が真っ暗になって、その場に倒れ込んでしまった。

高倉海鈴は眉を上げた。もうこれで耐えられないの？でもこれは始まりに過ぎない。これからの夏目家の人々は決して楽な思いはできないわ！