第044章 間抜けな大男

タクシーを止め、沐小夭は陳二狗と無言の王解放を連れて恒隆広場へと向かった。道中、小夭は状況を詳しく陳二狗に報告し、誇張も隠蔽もせず、できるだけ正確な状況を伝えようとした。解放は小夭にその強者の動きを何度か実演させ、最後に結論を出した。「狗兄、どうやら詠春拳のような感じだ。動きが鋭く、爆発力が強い。一瞬で70、80キロの相手を投げ飛ばせる。二寸以内の短い力が恐ろしいレベルだ。厄介な相手だ。この女の拳法は、ある境地に達すると接近戦では無敵に近いと言える」

小夭は顔を蒼白にし、陳二狗をこの騒動に巻き込んだことを後悔していた。恒隆広場に着くと、陳二狗は小夭に1階で待機するよう指示し、王解放と共にM2バーへと向かった。最初に目に入ったのは、震えおののく張兮兮の無力な後ろ姿だった。彼女の前には打ちのめされた仲間たちが倒れており、その中には彼女の恋人である顧炬も含まれていた。この連中はまだ気骨があり、親の力を借りて事態を収めようとはしなかったが、類は友を呼ぶとはよく言ったもので、普段から街の不良たちを見下していたこれらの二世たちは、強者を知らなかった。呼んできた援軍も、その美しい顔立ちの長髪の青年のウォーミングアップにしかならなかった。一斉に襲いかかれば顧炬側もこれほど惨めな負け方はしなかっただろうが、人は意地、仏は柱と言うように、誰も女のような男を大勢で取り囲んで殴るような真似はしたくなかった。

M2バーの客たちが騒ぎを見ようと近寄ってきたが、長髪の青年の後ろにいた女のような声の者が腰に手を当てて威圧的に怒鳴ると、皆おとなしく引き下がった。長時間の戦いの後も、拳が僅かに赤くなっただけの青年が一人で通路の中央に立ち、一夫当関万夫莫開の気迫を漂わせていた。張兮兮側の女性たちは、この一方的な一対一の戦いに恐れおののきながらも、あの「一晩七回男」に対して、弱者が強者に対して本能的に抱く歪んだ崇拝の念を感じていた。この弱肉強食の世界では、往々にして男は星空を仰ぎ見、女は自ら進んで男の足元に跪くものなのだ。