一時間後、タクシーは錦園の近くで停まった。
到着してから雨宮由衣は悲しいことに気づいた。庄司輝弥に持っていくはずの肉まんを、知らぬ間に自分で四個も食べてしまっていたのだ!
錦園に着いた時には一個しか残っていなかった。それも誘惑に耐えて残しておいたものだった。
急いで行かなければ!最後の一個は絶対に守らないと!
サプライズにするため、雨宮由衣は誰にも帰ってきたことを告げず、こっそりと裏門の小さな庭園から忍び込んだ。
近づいてきた時になって、雨宮由衣はようやく気づいた。もし庄司輝弥が今日錦園にいなかったらどうしよう?
雨宮由衣はそう考えながら、中庭を通り抜けて中へ向かった。リビングは小さな明かりだけがついているようで、少し暗かったが、灯りがついているということは誰かがいるはずだ。