第129章 絶対にいじめられることはない

沢田夢子は手のひらを強く握りしめ、心の中で雨宮由衣を何度も「バカ」と罵りながら、表情には困惑の色を浮かべ、目を真っ赤にして説明した。「そうじゃないんです。私は麗子さんが蘇我隊長のことをとても好きだって知っていて、今日の試合がとても大事だから、麗子さんがバスケットコートに来るかもしれないと思って、運を試しに来ただけなんです…」

雨宮由衣はその言葉を聞いて感心せずにはいられなかった。沢田夢子の黒白をひっくり返して言い訳する技量には脱帽するしかなかった。

江川麗子が負けたのも当然だ！

沢田夢子が困惑と恥ずかしさに満ちた表情を見せると、傍らの蘇我隼樹は瞬時に保護欲が爆発し、蘇我家が今や昔とは違うと考えると、自信も一気に湧いてきて、すぐさま怒りの目で江川麗子を見つめて言った。「江川麗子、もういい加減にしろ！お前が勝手に周りの人を心配させておいて、今度は夢子を責めるのか。世界中がお前というお嬢様を中心に回っていると思っているのか？」

はっ、彼女を中心に回る？

これまでの年月、誰が誰の周りを回っていたというの？

江川麗子は蘇我隼樹が沢田夢子を正義漢然と擁護する様子を見て、心が悲しみで満ちた。

きっと自分は狂っていたのだ。これまでの長年の感情があるから、この男性が少しは自分のことを気にかけていると思っていたなんて。

江川麗子が唇を強く噛みしめているのを見て、雨宮由衣は目を細め、蘇我隼樹を見つめながら静かに口を開いた。「蘇我隊長、なぜ麗子さんを責めるんですか？さっきまで麗子さんは夢子さんの心遣いに感謝していたじゃないですか？夢子さんのことが好きだからって、麗子さんをそんな風に責めるのはおかしいでしょう？私は夢子の親友だけど、さすがにこれは見過ごせません！」

雨宮由衣のこの言葉は見事に場の空気を変えた。皆は先ほど、江川麗子が最初から最後まで一言しか発していないのを目撃していた。全て沢田夢子という演技派が自分で騒ぎ立てて可哀想な振りをしていただけなのに、蘇我隼樹は本当に理由もなく彼女のために江川麗子を責め始めたのだ。

最初は江川麗子が自分の力不足で男に振られたのかと思っていたのに！今やっとその理由が分かった！あの人はあまりにも演技が上手すぎる！