第151章 もちろん彼女を許す

実際のところ、理屈から言えば、このような本能が彼女に備わっているはずはなかった。

前世では、父が彼女に護身術を身につけさせようと、わざわざ師匠に頼んで教えてもらったものの、たった一ヶ月ほどしか習っていなかった。

しかし、武術修行にせよ、他の技芸にせよ、一般人には馴染みのない技能でさえ、自分には並外れた要領があり、何を学んでも早かった。

まるでそれらのことが元々彼女の脳内に存在していたかのように、学習というより、本来持っていた記憶を呼び起こしているだけのようだった。

前世では、庄司輝弥から逃れるため、彼女は自分の容姿だけでなく、持っているすべての技能、光り輝く可能性のあるすべての面を隠していた。

そして今世では、もう二度とそんな愚かなことはしない。手に刃を持ちながら、自分や身近な人々をあのような悲惨な結末に追い込むようなことは。

放課後。

雨宮由衣が教室を出たところで、沢田夢子が熱心に入り口で待っているのが目に入った。

最近、突然江川麗子と親しくなっているのを見て、焦り始めたようだ。

「由衣!」雨宮由衣を見るなり、沢田夢子は即座に親しげに近寄って腕を取り、「今夜、一緒に焼肉を食べに行かない?」

雨宮由衣はいつもと変わらない口調で、「いいわよ!」

沢田夢子は歩きながら、探るように尋ねた。「由衣、今麗子と一緒に住んでるって聞いたけど?麗子のあの性格じゃ、きっと付き合いづらいでしょう?私の方に引っ越してこない?」

「別に大丈夫よ、引っ越しとか面倒くさいし」雨宮由衣は無関心そうに答えた。

沢田夢子は明らかにまだ不安そうで、「あのね、麗子が私のことで何か言ってた?由衣、私のことを一番分かってくれてるでしょう。麗子のあの件は本当に故意じゃなかったの。蘇我隼樹がしつこく付きまとってきて、私にも手の打ちようがなくて、麗子が傷つかないように必死で隠してたのに、結局麗子を傷つけることになって、しかも誤解されちゃって……由衣、私の気持ち分かってくれるよね?」

過去の自分なら、きっと理解していただろう。理解するどころか、証拠が目の前にあっても、沢田夢子を信じ続けていたかもしれない。