第233章 太るなよデブ

ついに、井上和馬は涙を流しながら部屋を出た。

彼は盗人のように心配し、板挟みになって悩み苦しんでいたのに、主人は「しっかり見張れ」だって?!

主人は若葉お嬢様のことに関しても、雨宮由衣に対して怒る様子すら見せなかった。

彼は本当に大失敗をしてしまった。

どうして主人が今、暴君への道をまっしぐらに進んでいることを忘れていたのだろう!

……

その後、雨宮由衣は地獄のような受験勉強に没頭することになった。

庄司輝弥が一度学校に来て以来、桃林は一本の草も生えないほどの静けさに包まれ、さらに大学入試を控えた緊張感も相まって、この期間は学校でも平穏に過ごすことができた。

以前から彼女と対立していた藤原雪は、まるで別人のように変わり、彼女が学校に戻った日に、自分でメイク落としを顔にかけ、クラスメイト全員の前で謝罪した。

対立するどころか、むしろ彼女の体調を気遣い、献身的に世話を焼くようになり、不適切な例えかもしれないが、まるで実の母親のように仕えるようになった。さらに沢田夢子が彼女を訪ねてくるたびに、藤原雪が追い払うようになった。

悪魔の威圧感は、伊達じゃない……

藤原雪が何を心配しているのかわかっていたが、もう小学生じゃないし、もともと告げ口する趣味もないので、一ヶ月間、藤原雪が工夫を凝らして持ってきたお菓子を食べているうちに、すべての恨みは消え去った。

普段は家で、庄司輝弥にお菓子を制限されているし、自分もお金がないし、庄司輝弥は服や化粧品、バッグは一部屋分用意してくれたけど、お金はくれない。必要なものは井上和馬に買ってもらうしかないけど、井上和馬が彼女にお菓子を買うはずもなく、本当に悲しかった。

あっという間に、大学入試まで一週間を残すだけとなった。

下校前に、担任は大学志願票を配り、家族と相談して記入するように言った。

雨宮由衣はいつものように、いつもの場所で井上和馬を待っていたが、庄司夏も後についてきた。

雨宮由衣は警戒した表情で、「なんでついてくるの?」

最近は大人しくしているとはいえ、油断はできなかった。

庄司夏はのんびりと後ろをついてきながら、「車に便乗させてもらえないの?」

車に乗ると、後部座席に庄司輝弥がいた。おそらく今日は早く仕事が終わり、井上和馬が先に彼を迎えに行って、それから自分を迎えに来たのだろう。