第245章 1銭も渡さない

「裁判所からの召喚状は届きましたか?」携帯の向こうから少女の父親の冷たい声が響いてきた。

「私は橋本羽のマネージャーの桧山春樹です。三上真之介さん、いくらでも用意できますから、メディアの前で真実を話してくれませんか!」桧山は録音ボタンを押しながら、相手の言質を取ろうとした。

電話の向こうの男は一瞬黙り込み、そして怒りに満ちた声で言った。「クソ野郎!何を言っているんだ?橋本羽は小児性愛者の変態だ。金持ちだからといって、道徳も人倫も無視して、好き勝手なことをして、白を黒と言い張るなんて!」

一体誰が白を黒と言い張っているのか?

桧山は今やっと、先ほどの橋本羽が制御を失った気持ちが分かった。深く息を吸い込んで言った。「三上さん、あなたの娘さんの重病の手術費用も治療費も全部羽が出したんですよ。こんな風に彼を中傷して、良心が痛みませんか?」

「橋本羽が私の娘の手術費を出したからって、娘を好き勝手に弄んでいいというのか?」

「あなたは...」桧山は相手がここまで厚かましいとは思わなかった。言質を取るどころか、逆に激怒させられてしまった。

「橋本羽は自分の欲望を満たすために、私のあんなに小さな娘まで手を出す、まさに畜生だ!」

その時、傍にいた橋本羽が突然桧山から電話を奪い取り、一字一句はっきりと言った。「言っておくが、訴えても無駄だ。私は、一銭も払わない!」

電話の向こうの男は冷笑いながら言った。「いいだろう、橋本羽、お前がそこまで強情なら、とことんやろうじゃないか!」

……

風間川治と江川麗子と別れた後、雨宮由衣は自分の携帯のメッセージボックスを確認した。

兄とのメッセージ履歴で、最後のメッセージは昨日の待ち合わせの連絡のままで、まだ返信がなかった。

雨宮由衣は口元に笑みを浮かべ、瞳に火が灯った。いいわ、非常手段に出るしかないってことね?

雨宮由衣はゆっくりとまた一通のメッセージを送信した:[10分以内に電話をくれないと、あなたとグラビアモデルたちとベッドで戯れている動画が沢田夢子のメールボックスに送られることになるわよ!]

メッセージを送信した後、雨宮由衣はその場に立ち、心の中で数え始めた:1、2、3、4、5、6……

9まで数えたところで、携帯が鳴り出した。画面には「世界最強イケメン」という文字が激しく点滅していた。