翌朝。
雨宮由衣が目を覚ますと、ベッドの横には誰もいなかった。
庄司輝弥はもう起きたのだろうか?
雨宮由衣が携帯を手に取って確認すると、もう正午近くだった。昨夜の不眠のせいで、今日は寝坊してしまったのだろう。
雨宮由衣はベッドの上でしばらくぼんやりとした後、髪をかきあげながらベッドから起き上がった。
書斎の前を通りかかると、雨宮由衣は入り口に立っている二人のメイドが内緒話をしているのを見かけた。
「本当なの?お薬を持って行ったら、九様がすぐに飲んでくれたの?」
「そうなの。九様は仕事中で、かなり難しい案件だったみたいで、すごく怖い顔をしていたの。私はもう一度後で来ようと思って退出しようとしたんだけど、九様が突然私を呼び止めて、お薬を持ってくるように言われて、一瞬の躊躇もなく飲んでくれたの……」