翌朝。
雨宮由衣が目を覚ますと、ベッドの横には誰もいなかった。
庄司輝弥はもう起きたのだろうか?
雨宮由衣が携帯を手に取って確認すると、もう正午近くだった。昨夜の不眠のせいで、今日は寝坊してしまったのだろう。
雨宮由衣はベッドの上でしばらくぼんやりとした後、髪をかきあげながらベッドから起き上がった。
書斎の前を通りかかると、雨宮由衣は入り口に立っている二人のメイドが内緒話をしているのを見かけた。
「本当なの?お薬を持って行ったら、九様がすぐに飲んでくれたの?」
「そうなの。九様は仕事中で、かなり難しい案件だったみたいで、すごく怖い顔をしていたの。私はもう一度後で来ようと思って退出しようとしたんだけど、九様が突然私を呼び止めて、お薬を持ってくるように言われて、一瞬の躊躇もなく飲んでくれたの……」
「うそ!あなた、すごくラッキーね!」
少し離れたところで、雨宮由衣はそれを聞いて安堵を感じた。あの人もようやく自覚が出てきたようだ。
定時に薬を飲むことはもう心配する必要がなく、最も重要な睡眠も確保できるようになった。今は感情を穏やかに保ち、イライラを避け、怒りを抑え、過労を避けることが必要で、これらはどれも欠かせないものだった。
言ってしまえば、どれも簡単にできることばかりなのに、庄司輝弥にとってはどれも非常に困難なことだった。
今残された最も厄介な問題は過労を避けることだった。
庄司輝弥は誰も信用せず、すべての事を自分でこなそうとする。これは不可抗力で、基本的に避けられないことだった。
そのために、庄司輝弥は体調を悪化させるまで働き続け、前世では完全に消耗し切ってしまった。
仕方がない。権力が大きければ大きいほど、責任も重くなる。庄司輝弥はその立場にいる以上、これらの事を背負わなければならない。今すぐにすべての仕事から手を引くように言っても、それは明らかに現実的ではない。
どうすれば彼があまり心身を消耗しないようにできるだろうか?
雨宮由衣は扉の外に立ち、軽く咳き込む庄司輝弥を見つめながら、再び気持ちが重くなった。
この点については、今のところ解決策が見つからない。ただ定期的に休息を取るよう促すしかない。次回、我孫子彦夫が庄司輝弥の定期検査をする時に、彼の状態を確認してから考えることにしよう……
……