第490章 家族会議

我孫子彦夫の言葉を聞いて、部屋の中の人々は一瞬沈黙した。

「よく考えてください」我孫子彦夫はため息をつき、そして立ち去った。

老夫人の表情は落ち込み、孫を見る目は痛ましさに満ちていた。「九、あなたの意見は？やはり早めに病変した臓器を移植したほうがいいんじゃないかしら。さもないと、もし...」

後の言葉は、老夫人は言い続ける勇気がなかった。

しばらくの沈黙の後、庄司輝弥は冷ややかな表情で「会議を開いて決めましょう」と言った。

雨宮由衣はそれを聞いて、すぐに眉をひそめた。会議で決める？

少し考えた後、彼女は庄司輝弥の意図を理解した。

今や庄司輝弥の病状は完全に漏れ出ており、一族のほとんどが情報を探っている。まして手術となれば、これほど大きな事は隠しきれないだろう。

隠し立てして彼らに勝手な推測をさせるよりも、直接一族会議を開いて、長老たちと公明正大に協議したほうがいい。

二時間後、庄司家の屋敷にて。

すべての長老が集まり、我孫子彦夫も同席していた。雨宮由衣は一人でソファの隅に座り、表情は少し上の空だった。

誰も雨宮由衣に注目していなかった。全員の注目は我孫子彦夫に集中していた。

我孫子名医も来ていることを見て、すべての長老の表情は微妙になった。この一族会議が最近の庄司輝弥の重病で死にかけているという噂に関係していることを察した。

一瞬のうちに、全員が息を殺して、老夫人と庄司輝弥の方向を見つめた。

老夫人はソファに座り、杖を手に持っていた。もし手に支えるものがなければ、今頃はまともに座っていられなかったかもしれない。

鋭い目で出席者全員を見渡し、老夫人は厳しい口調で話し始めた。「この頃の皆さんの九への心配、私は全て承知しています。九の体調というこれほど重大な事は、皆さんに隠すべきではありません。そこで今日は我孫子先生をお呼びして、九の病状について皆さんに説明していただき、また、一つ皆さんと相談したいことがあります。」

老夫人の言葉を聞いて、長老たちは次々と小声で議論し始めた。

病状？

どうやら噂は本当だったようだ...

しかも恐らく病状は既に隠しきれないほど悪化しているのだろう...

群衆の中で、庄司雅道はこっそりと嘲笑的な表情を浮かべた。

ふん、庄司輝弥は死ぬまで隠すつもりだと思っていたのに、まさか自ら公表するとは。