「井上和馬の電話?」
報告が早いわね……
「先に自分で消化しておいて、私は電話に出るから」雨宮由衣は等々力辰に言った。
等々力辰は頷いて、おとなしく台本を持ってソファーに座った。
「はい、雨宮白です」雨宮由衣は答えた。
電話の向こうの井上和馬は男性の声を聞いて一瞬戸惑ったが、すぐに雨宮由衣の側に他の人がいるため、雨宮白という身分を使っているのだと気づいた。
「あの、結衣様、先ほどメイドが薬を持ってきましたが、もう10分経っても九様はまだ服用されていません」井上和馬は忠実に報告した。
「何をしているの?」雨宮由衣は眉をひそめて尋ねた。
「あなたがお帰りになってから、九様はずっと書類を見ておられます」井上和馬は弱々しく答えた。
「ふふ」雨宮由衣は冷たく笑って、そのまま電話を切った。