第506章 彼女を捕まえろ

蘇我保司は困惑した表情を浮かべた。

そうは言っても、彼女は力のない弱い女性だからこそ、私たちと一緒に来たのだ。この状況で自分で羽を生やして飛び出せとは言えないだろう？と考えた。

影流と蘇我保司が様子を見守っている間に、雨宮由衣は既に一群の男たちに囲まれていた。

クラブの他の客たちは、この状況を見ても珍しくもないという様子で、誰一人として介入しようとせず、むしろ皆遠くに逃げていった。

この店は田中正輝のものだから、当然誰も口出しできない。

金髪は傲慢な態度で、「お嬢ちゃん、良い話を聞かないと後で後悔するぞ。大人しく俺たちについてきて、田中の若様の相手をするんだ！さもないと...」

「貴、美女にそんな乱暴な態度はよくないだろう！」田中正輝は雨宮由衣から目を離さず、その視線は既に欲望に満ちていた。

江川麗子の方に目を向けると、田中正輝の目は更に輝きを増した。先ほどは遠くから見ていて何とも思わなかったが、近くで見ると、この赤い服を着た女も非常に魅力的だった。

もし二人一緒に...ふふ...

今夜は本当にツイているな...

田中正輝はウォッカのグラスを手に持ち、よろよろと近づいてきた。「この美人もなかなかだね。一緒に僕の相手をしないか？僕は...ハーレム...が大好きなんだ...」

周りの手下たちはそれを聞いて一斉に大笑いした。

「ハハハハハ...」

「田中の若様、今夜は艶福が満開ですね！」

「田中の若様に感謝しなきゃな。恵みの雨のように、お前ら姉妹二人とも田中の若様のベッドに上がれるチャンスだぞ！」

その汚らわしい言葉を聞きながら、雨宮由衣の目が冷たく光り、江川麗子を守るように半歩後ろに下がった。

この連中と揉め事を起こしたくなかった彼女は、後ろを振り返って一瞥した。

影流と蘇我保司は近くにいた。

しかし、彼女が影流たちのいる場所を見つけると、影流の嘲笑と軽蔑の眼差しに出会い、その隣の蘇我保司は彼女を見ていたにもかかわらず、わざと彼女の視線を避け、うつむいて黙っていた。

二人は明らかに彼女の状況を知っていながら、その場に立ち尽くしたまま、全く手を貸す気配がなかった。

想像するまでもなく、影流は意図的に助けようとしないのだ。

雨宮由衣はその様子を見て、口元に冷たい笑みを浮かべた。ふん、秋山若葉の人心掌握能力を見くびっていたようだ。